アイラブ桐生 第二部 20~22
ちらりと横目で見たときに・・・・
なぜか不満顔をしている百合絵に気がつきましたが、私にしてみれば
軍資金も溜まってきたことでもあり、
そろそろ行動開始の時期と決めていたので
それほど気にしないことにしました。
早速パスポートの手続きを取り、それからは沖縄行きの準備が
あわただしく始まりました。
といっても荷物がそれほどある訳ではなく、若干の気持ちの整理と言うか、
『心の準備だけ』のたわいもないレベルです。
場所は、お下げのお店でいつもの3畳の小上がりです。
最初に顔をだしてくれたのは、半年あまりにわたってお世話になった、
青柳インテリァのひげ社長と奥さんの二人でした。
生まれたばかりの赤ちゃんは、
奥さんの母親が自宅で面倒を見てくれています。
乳幼児用の保育の施設が見つかるまでは、泊りこんだままで
世話を焼いてくるという話を聴きました。
「嫁が二人もいるようで、
このまま(保育園が)見つからないほうが俺には助かる!」
とひげの社長は大笑いをしています。
「いい旅をしてきてね」
早くも涙ぐんでいる奥さんからは、餞別と一緒に花束までもらいました。
入れ替わるようして、守が舞台衣装のままでやってきて来ました。
「お前には、すっかりと世話になったなぁ」とだけ繰り返します。
「達者でやれよ、まあ・・・・お前なら日本のどこに行っても大丈夫だ!」
と、激励だか失言だか解らないスピーチを繰り返します。
頃愛を見計るように、やおらビールを継ぎ足して
京子に投げキッスをしてからじゃあなともう一度手を振り
あっさりと消えていってしまいます。
「ごめんね~。 最近すこし忙しいの・・
せっかくの旅立ちだというのに、愛想が無くてごめんなさい。」
京子がカウンターから首を伸ばして、代わりに謝ってくれています。
作品名:アイラブ桐生 第二部 20~22 作家名:落合順平