監視者
「このグループはまだ少数ですし、彼らも開発作業には参加しているので大丈夫だと思います。いざとなったらこちらで操作することもできますから」
「でも、できれば、そうしたくはないのだろう」
「もちろんです。彼らが今後何をするのか楽しみですからね」と主任は少し声を大きくした。
「まあ、放っておいても大丈夫だろう。しかしこうなると、他にもいろいろな思想が出てくるかもしれないな」
「ええ、楽しみですよ」
「国家のようなものを作ったりはしないのかい。街と街はかなり離れているじゃないか」
「今のところはありませんね。こちらの蓄積データに基づいた、彼らの共通意識のようなものがありますし、街が離れていても仲間は仲間だと思うのではないでしょうか」
「それならいいがね。こうも人類に近づいていろいろな思想が出てくると、そのうち国家ができて戦争を始めてしまうのではないか、などと思ってしまうよ」
「可能性がないとは言えませんが、恐らくそれはないでしょう。まあ、その時はこちらでコントロールしますよ」
「そうならないよう、わたしも祈っておくよ。できる限りこちらの手を加えず、彼らの自由にさせたいからな。我々人類の入植がなければ、実際にあの星は永遠に彼らのものだ」
「はい。その方が彼らにとっては良いのかもしれません」
「さあ、邪魔をしてしまったな。あとは報告書を楽しみにしておこう」
「わかりました。週明けには送りますので」
「どうだい、彼らの様子は」頭の禿げあがった男は、部屋に入るなり太った男に声をかけた。
「局長、おはようございます。最近の進歩はすごいですよ。ついに銀河系外にまで出てきました」
頭の禿げあがった男は「ほう」と言いながら、そばにある椅子を引いてきて太った男の横に座り込んだ。
「ただちょっと……。これを見てください」と言って太った男は手元のコンソールを操作した。
「ふむ、殺し合いに環境汚染か……。まるでかつての我々を見ているようだな」と手元の携帯端末を見ながら頭の禿げあがった男が言った。
「ええ。もう少しこちらでコントロールするべきだったかもしれません」
「彼らの自由にさせすぎたな」
「そろそろ何か手を加えましょうか」
「いいや、彼らはもうダメだろう。我々の開発団を送って彼らは処分しよう」