カップルの出来やすい場所
おお!いい匂いがますます強くなってくるなあ。それにしても狭くて入り組んだ横丁だ。天井も壁も粉っぽい感じだしなあ。でもいい匂いがする。さて、何を持ち帰ろうか。一番甘い匂いのするミツかな。
初めて来た路地は思ってた以上に入り組んでいて、オレは出口が分からなくなってしまった。あちこちにぶつかり身体中が粉にまみれてしまった。女へのおみやげを抱えてようやく外に出た時、やはり目立つあの女には別の男が話しかけていた。
女がこちらを見て、にっこり笑った。オレはいい気分になって女のもとに急いだ。女が微笑んでいる。側の男も微笑んでいる。ん? 男はいらんぞ。
男が一歩前に出た。……と、記憶はそこまでだった。
作品名:カップルの出来やすい場所 作家名:伊達梁川