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ただ書く人
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死んだ方がまし

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「地獄の管理者よ、これはどういうことかな」天国の面接官は、末吉と管理者の姿を見てすぐに管理者に尋ねた。
「面接官さん、どういうことなのかはわたしが聞きたい。すべての情報はお送りしましたが、ご覧になっていないのでしょうか。こちらの末吉さんには地獄での労働は不要です。生まれ変わりの準備に入るべきです。それなのにあなたは哀れなこの方にさらに二度までも死の苦しみを与えた」管理者は少し語気を強めて面接官に詰め寄った。
「末吉を殺したのはわしではない。殺した者たちもいずれ地獄に行くであろう。その時に十分罰を与えるがよい。そしてその者たちと同じように末吉もまた罪人なのだ。天国にいることはできんよ」
「ですから、末吉さんの事情はすべておわかりでしょう。この方にこれ以上の罰は必要ありません。心の優しい方で悔いる気持ちも強い」
「末吉の事情はわかっておるが、ルールなので仕方のないことだ。地獄での労働を課せばいいではないか」
「ルールはそうかもしれませんが、救われるべき者だってあるのです。どうしてわからないのですか」
「例外を認めるわけにはいかないのだ。ルールが何のためにあると思う。そちらこそどうしてわからないのか。少しでもいい。地獄で労働をさせろと言っておる」
「あの体でどんな労働ができると言うのですか」
「それを決めるのが管理者の仕事ではないのか」
「それで決めたことが、天国に行かせることでした」
「無理だ。労働のない罪人は受け入れることができない。労働ができないと言うならずっと地獄に置いてやればいいではないか」
「それでは生まれ変わりができない。末吉さんにずっとあのままでいろと言うのですか」
「それも仕方のないことだ」
「生まれ変わりの道を決めるあなたがそのようなことを言わないでください」
「生まれ変わりの道を決めるにあたって、末吉には地獄での労働が必要だ。だが地獄に戻すと管理者どの、あなたがまたここに戻してしまうだろうと思ったからな。生き返らせて善行を積む機会を与えたのだ。善行を積めば地獄に行かずにここに来られるかもしれないからな」
「あの体で生き返っても何もできないことはおわかりでしょう」
「それがわしにできる最大の譲歩だ。そうでなければやはり地獄での労働しかあるまい」
「それは無理だと言っているのです」
 地獄の管理者と天国の面接官は、互いに譲らず言い合いを続けた。末吉もさすがに黙っていられなくなって、ふたりに割って入って大声を出した。「ちょっとよろしいですか。お願いがあるので」
言い合っていた両者はその声に言葉を止めて、末吉の方を見やった。
「天国にも地獄にも、生き返っても居場所がないということですよね。それならいっそのこと殺してくれませんか」
作品名:死んだ方がまし 作家名:ただ書く人