小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

アイラブ桐生・第二部 17~19

INDEX|6ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 



 奥さんには内緒で、ひげ社長が奥さんの実家へ何度も足を運んだ結果です。
頭を畳にこすりつけて、ひたすら頼みこんできました。
あらためて結婚の許可を願い出たうえに、出産にいたるまでの顛末を
ただひたすらに詫びてきたといいます。
「お父さんは意地をはっていますが、なにそのうちに、初孫の顔を見れば
あとは自分で何とか考えるでしょう。
初孫が可愛くないはずなどがありません、まぁもう・・・・風前の灯です。」
と娘の顔を見ながらおばあちゃんは、笑いのけていました。
これでようやく産後の環境が整って、奥さんも安心して出産に臨めそうです。




 デッサン会のほうも順調にすすんでいました。
さっちゃんも顔をだして、都合5人での勉強会になりました。
テーマーと書く素材を決めてから、決められた時間内でそれぞれが一斉に書きはじめます。
決められた時間がくるとデッサン帳をそれぞれの隣に渡します。
また新しいページへ、次の書き込みを始めます。



 ぐるりと一周をする自分のデッサン帳が、自身の手元に戻ってくるまで
この勉強会は、時間をかけて繰り返されます。
こうすることでと、5人全員の画が自分の手元に残ります。
他人が書いたものと見比べると、技術はもとより、その思考や感性の違いまでを
目の当たりに確認することが出来ました。



 何がどう違うのか・・・サンプルの同時比較ともいえるこの勉強会は、
実に分かりやすいうえに、それなりの収穫がありました。
驚かされたのは、姐肌の持っている図抜けたデッサン力とその技量でした。



 姐ごのデッサンは、磨きぬかれた線一本で、
見事なまでに的確に、対象物をぞんぶんなまでに表現しきりました。
緻密ともいえるデッサンの出来栄えには、驚嘆すべきものがあります。
この人の才能は別格だ・・・・ 瞬時にそう思えるほどの出来栄えでした。


 ただ、たいへん残念なことに、
このメンバーに茨城くんは入れてもらえません。
何で俺だけ・・と度あるごとに嘆いています。
どうも恋の行方と似たようなところがあって、
いまだに悪女たちには焦らされています。
そう言えばいまだにさっちゃんも、茨城君を焦らし続けていました。
(う~ん・・、可愛い顔をしているくせに、こいつも悪女の一人だ。)





 新築住宅でのカーテンレールの取り付けが予定よりも早く終わり、
今日はもう、こんなところで早じまいでいいだろうと、
3時過ぎに戻ってきた日のことです。
産み月が迫ってきて(おなかが)ずいぶんと大きくなり、
歩くのがやっとに見える奥さんが、帰宅と同時に声をかけてきました。



 「ねぇ、群馬くん。
 もう彼女ができましたか?。
 どうしても会ってお話がしたいって、
 女の子から何度も、泣きそうな声で電話がかってきてました。
 隅におけませんねぇ・・・
 あまり、女性を泣かせないようにしてください。」



 と笑いながら、ひげ社長や茨城くんには見えないように
袖に隠して、電話番号のメモを渡してくれました。
そんなに大げさなことまでしなくても・・・と思ってよく見たら
一万円札も一緒にはいっていました。
「給料日前でしょう、でも、利息はちゃんといただきますから」
と、にっこりと笑います。