小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

アイラブ桐生・第二部 17~19

INDEX|2ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 



 「あら、群馬。
 (東京が)初めての割には、
 ずいぶんと、小洒落た処を知ってるのね~」

 「へぇ~見かけに寄らず、中は広いんだぁ!」



 がやがやどかどか、好き勝手な感想を口にしながら
怪奇館の3人娘とさっちゃんが現われたのは、約束時間の少し前でした。


 「茨城くんは、まだだけど・・・・」

 「いいからいいから気にしない、気にしない。
 あいつなら、一張羅の背広にネクタイをむすぶのに手こずって
 どうせ遅刻してくるから、もう勝手に始めましょう」



 え、あいつが背広にネクタイ?・・・・
ほんとうですかと大げさに驚いて見せると
澄ました顔で、スレンダーな姐ごがスッパリと言い切ります。



 「いつものことで有名な話だわよ、ねぇ~みんな」


 当のさっちゃんも、苦笑をしています。
どうやらこうした展開は、初めてのことではないようです。


 「私たちは、ダシなのよ。
 まぁ、それはあんたも一緒のことだけど。
 それでね、そのうちになんだかんだと茨城が理由をつけて、
 苦しい言い訳をさんざんしゃべたあげくに、
 さっちゃんと二人になりたがるの。
 まぁね・・・・それも毎度のことだけど。」


 さっちゃんは、下をむいたまま笑いをこらえています。

 「ばっかなんだよね~茨城は。
 さっちゃんも、もうその気になっているから、いつでもOKなのに、
 あのバカったら何を勘違いしているのか、
 さっちゃんの本心に気がついていないのよ。
 鈍感と言うか、臆病すぎるというのかしら、とにかく
 『晩熟(おくて)』なのよ・・・・
 相も変わらずあの手この手で、さっちゃんにカマをかけ続けてくるんだもの。
 面白いから、もうすこしだけ、みんなもさっちゃんも、
 気がつかないふりをしてるだけなの。」 


 ここだけの話だよ、と姐肌がきつくクギをさしました。




 やがて茨城君が、姐肌が言い当てた格好のままで現れました。
三畳の小上がりで、男女の6人がひしめきあいながらの酒盛りのはじまりです。
途中で、顔を出した守が一声だけの挨拶に来ましたがすぐに離れて、
一人でカウンターで飲み始めました。


 やがて姐肌が言ったとおりに・・
席をたつための言い訳を、さんざん繰り返した茨城君が、
さっちゃんに、せわしない目配せをしながら赤い顔をしながら立ちあがりました。
茨城君がみんなに背中を見せて、わずかに隙を見せた一瞬に、
さっちゃんが、すかさずV字のサインをつくります。
3人娘も、すかさず返事のOKのサインを出します。
なんと全員が、両手で頭の上に大きな丸の形をつくりました。
どうやらこれも、恒例といえる決まり事のようです・・・
知らぬは茨城くん、ただ一人です。



 人の恋路にもいろいろあるものだと、つくづく思った瞬間です。
あいつ、いや茨城君は、まださっちゃんを口説けていないのでしょうか・・・
人ごととはいえ、すこし茨城君が不憫になった瞬間でした。