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アイラブ桐生・第二部 17~19

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 うんと答えたものの、躊躇もあって遅れて立ち上がっていたら、
百合絵はさっさと一人で行ってしまいました。
背筋を伸ばした百合絵は、まったく躊躇などは見せることもなく、
守が歌っている舞台のまん前まで、颯爽と進み出てしまいました。
守が、目線を横切っていく百合絵の姿に気がつきました。
覚悟を決めて百合絵の正面に立ち、右手をその肩に置こうとしたら、


 「群馬・・・それは、チークダンス。
 この手は、指を伸ばしてここへこうするの。」


 耳元に口をよせて、百合絵がささやきます。
ためらいなくやってきた百合絵の指は、私の指をつかむと
自分の背中側へまわし込み、背筋に沿ったあたりから、
さらにすこしだけ下方へずらします。
背中と腰のくぼみの定位置へ、しっかりと導きました。



 「指は、きれいにまっすぐ伸ばして。
 ほら・・もうすこし、くっついてよ、遠慮しないで。」



 「上手だわ。次に私がターンをしたら、
 同級生のすぐ目の前よ。よろしくね。」

 お願いと、百合絵が片目をつぶります。



 くるりと回わりながら、ステップを踏み、百合絵と私が、
守の真下へ最接近をしました。
守は、目と鼻の先です。歌唱中の守が驚いていました。
百合絵がにこやかにほほ笑むと、右手を離して守へ小さく手を振りました。
つられてこちらも手を振ってしまいます。



 もう一度、守の目線がこちらを向いたときに
百合絵が最後列に座るメンバーたちの方向を、こっそりと指差します。



 「上手くいくのかなぁ」


 「当人同士の問題だもの。
 産むのも産まないのも、二人の結論次第の話。
 よくある話だし・・・
 京子に、あれだけの親衛隊がいれば、
 あんたの親友も。この先で少しは考えてくれるでしょう。」

 「そんなものかなぁ・・・」


 「あのデッサンは、
 全部私たちから、京子への応援と激励のメッセージ。
 東京でまた、お友達が増えたことの記念品。
 今の京子に必要なのは、たくさんの女友達をつくることだと思う。
 何でも話せるようになれば、一人で悩むこともなくなるし、
 女って、群れていることで安心できる生き物なのよ。
 まぁ、そんな事を言っても鈍感な群馬には無理か・・・
 
 そんなことよりも、さぁ
 あんた本当に彼女、いないの・」



 まじまじと正面からのぞき込んでくる百合絵の目が、
何故かはにかんでいます。



  「あたしとじゃあ、だめかな・・・」



 聞き取れないほどの小声でささやき、、
くるりと綺麗なターンを二度ほど見せてから、再び耳元に寄ってきました。



 「今日だけの、思い出をつくっておこう。
 どうせ私になんか、振り向いてなんかくれないんだもの、
 明日泣く前に、
 せめて今日だけを、楽しませて。」


 どうして、
レイコに似たような女ばかりが寄ってくるのだろう・・




アイラブ、桐生



 第二部 第一章(完)

 第2章では、施政権返還前の沖縄に舞台が移ります。
まずは、寝台特急「富士」で、九州、最南端までの鉄路の旅を辿ります