ポージー
「本当に、愛されてるね」
「……急になんだ」
「これって、ポージー・リングだよ」
ほら、とリングの裏側を指される。
『Je t'aime beaucoup』
フランス語で書かれたそれに、和己は今度こそ羞恥で赤くなった。
愛されている、と。
どれだけの想いをこめたのか。
自分では量れないくらいの愛情かもしれない。
「別に、左の薬指じゃなくてもいいんじゃないかな。それに、ファッションの一つだと思えば。ね、和己」
手渡され、その指輪の裏に刻まれている文字をしばらく眺めていた。
そろそろと右手の薬指にはめてみる。ぴったりと収まったものが、恋人の存在とその愛情を表していて、和己の心を甘く疼かせる。
嬉しそうに微笑む温に、和己も口元を微かに綻ばせた。
今日は、悠馬が帰ってくるまで起きていようか。
このリングの存在に気づいたら、どんな顔をするだろう。
和己は言葉の意味をそっと唇に乗せながら、笑みを深くする。
『小さな花束』と『詩』。
二つの意味を持つ指輪に刻まれた、愛しい恋人の想い。
ホワイトデーに贈られたプレゼントが、和己の胸に再び熱を灯していった。