スケッチブックをもう一度
予想してたわけではないけれども、俺は返事を見て、期待していた疑問を、自分で自分に問いかけている気がした。携帯を閉じて、俺は無い体力を振り絞って走り出した。走らなきゃ行けない気がした。この寒い夜風に、自分の卑屈さに、全てに、抵抗しなきゃいけないんだ。抵抗して、ボロボロになって何もなくなった自分が本当に欲しい物が見つかる気がした。破り捨てられたスケッチブックはとうの昔に捨てられて、もうそれは手に入らないだろう、過ぎた時間も戻ってこない。けれども、何かを願う気持ちは、何時だって取り戻せるんだから。
閉店間際の文房具屋に駆け込んで、俺は、叫んだ。
「スケッチブックをください」
作品名:スケッチブックをもう一度 作家名:夢見 多人