明智サトリの邪神事件簿
わたしたちを見下して、怪人が不気味に笑う。その声は別人のように甲高くなっていた。
「バカな人たちだ。自ら私の『巣』に入るとは……」
怪人は動けない先生の頬をいやらしくなでる。
「しかしあなたは美しい……。いい『素材』になりそうです」
「…………」
わたしと同様に口を縛られている先生は、無言で彼を睨みつける。
素材って何のこと? 先生をどうするつもり……!?
「ん~!」
わたしが必死にもがくと、怪人はわたしをモノのように足蹴にした。
「君はまだ幼すぎですねえ。まあ使える『部分』はあるかもしれませんが」
そ、それどういう意味……!?
やがてわたしはすまきのまま、大きい木箱に入れられ、視界は闇で閉ざされた。頼りの先生も見えないし、不安と恐怖でもう何も考えられない。
わたしを入れた箱は持ち上げられ、しばらく宙を浮かんだ後、ドスンと落とされた。
そしてエンジンの音が聞こえ、振動が伝わる。自動車に積まれたんだ!
わたし……これからどうなるの……!?
作品名:明智サトリの邪神事件簿 作家名:よもぎ史歌