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アイラブ桐生・第二部 14~16

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 「待たせたな。おい、入れよ。」

 やっと戻ってきた茨城くんが、後ろを振り返り手招きをしています。
ドアのところには、長髪の女の子がどうしたものかと、
たじろいでいるのが見えました。


 「大丈夫だって。
 こいつは、ここの怪奇館の住人じゃないぜ。
 つい最近、群馬からはるばると上京してきたばかりの田舎者だ。
 ついでだから、東京の暮らし方ってやつを、
 この田舎者にも教えてやってくれ。
 こいつも、桐生とかいっていたから、さっちゃんとは、同郷だろう?」


 「え、桐生からですか!
 私も桐生です。どのあたりですか。!」

 同郷と聞いて警戒を緩めた女の子が、一歩二歩と部屋の中に入ってきました。
良く見ると色白で、まつ毛の長い、いやみをもたない細面の美形です 。 

 「本町1丁目です、家は下町で天満宮の近所です。」

 「うそっ、・・・まったくの近所だわ。」

 「あなたも、天満宮の近所ですか。」


 「わたしも1丁目です。
 山の手通りのすぐ下ですが。
 天満宮の境内では、毎日遊んでいました!わあ、懐かしい!!。」


 がぜん盛り上がりそうな展開になってきました。
この突然現れた女の子は、隣のアパートに住む美術大学の学生でした。
「怪奇館」と呼ばれているこちらのアパートにも、
同じ大学へ通う2人の女学生が居るそうで、
どうやらそちらの2人とは深い親交があるようです。
気配から察すると、茨城くんが恋慕しているように見えましたが、
観察をするにつけ、この二人の間にはどうやら
まだまだ微妙な距離がありそな気配です。


 すぐ隣のアパートに住むとはいえ、このさっちゃんも、
茨城くんにいくら呼ばれても一人で乗り込むには、
相当な勇気がいると思います。
そんな空気に気がついたのか、茨城くんが下手な弁解を始めました。


 「我が館にも、女人は3人ほどいます。
 そのうちの2人が、ここにいるさっちゃんと同じ美大の女学生です。
 しかしまぁ、私がこう言ってしまっては、
 あまりにも失礼なお話ですが、
 さっちゃん以外は、女としては存在価値は、問題外の二束三文です。
 女人として見ることさえも、実ははばかられます。
 まぁ、、これ以上、私の口からは仔細を申しあげられません。
 言うとのちのちに、いろいろと差しさわりなども出てきますので・・・・」


 その時でした。
どやどやと足音が響いてきて、
あっというまに女性の一団が茨城君の部屋に現れました。
先頭の一人が腕組をしたまま、強い目線で茨城君へ挑んできました。


 「あんたねぇ、
 仔細を言うとどこかに支障が出来るわけ?
 どうせ褒めてくれないことは解っているけれど、
 さっちゃん以外は女じゃないなんて、ずいぶんと言ってくれるわね。
 また言葉巧みにさっちゃんを引きずり込んだというから、
 こうして、『女ではない』3人で、救出に来たんだけど、
 なんか様子が変だわね・・
 第一、さっちゃんが、安心したような顔で座っているし、
 見かけないのも一名いるし・・・
 どうなってんのさ、茨城君。」

 
 「あら、ほんとうだ・・・見かけない顔だわねぇ」

 「あらまぁ、邪魔者がいたんじゃぁ、
 さすがの茨城も、さっちゃんには手をだせないか。
 でもほんとに見かけない顔だねぇ・・あんた、何者さ?」


 入口に突っ立ったままで、3人で好き勝手な会話をしています。
すでに気遅れをしたのか、今までの勢いはどこへやら、茨城君はすでに
部屋の一番奥へ避難をしています。
どうやら、先頭で腕組をしているスレンダーな女の子が
苦手なように見えました。
見た感じでも、この女の子が全体のリーダー格のような雰囲気があります。
仕方が無いので、自ら自己紹介をして名乗り出ることにしました。


 「他人の部屋で、上がってくださいというのも変ですが、
 よかったら一緒に話をしませんか。
 私は、たった今ここで行き会ったばかりのさっちゃんと、
 同じ桐生の出身です。
 懐かしいだろうからということで、茨城くんがわざわざ彼女を誘って
 連れて来てくれたというのが、どうやらこの場の顛末の様です。
 せっかくだから、みんなで仲良くやりましょう。
 さあ、あがって、あがって。」

 「へぇ、そういうことだったんだ・・・
 あんたも面白い事を言う児だわねぇ、気にいっちゃった!。
 じゃあ今夜は予定を変えて、ここで一杯やろうか。
 ねぇ、みんな。」


 リーダー格と思われる女の子がそう言うと、
背後に顔をそろえた二人が、同時に拒絶の声を出しました。
茨城君はリーダー格の女ばかりか、後ろの二人にも嫌われているようです。
渋い反応の二人に向かって、
「ねぇ、私も久し振りに桐生の話が聞きたいし」と、さっちゃんが口をきき、
リーダー格が、『そう言わずに』と、強い態度と視線で振り返ります。
「せっかくのお客が来ているのだから、たまには、
もてない茨城の顔もたててやろう」と言う最後のひと押しが功を奏して、
二人も、ようやく同意をします。


(へぇこの子、意外と統率力を持ってんだ・・・
俗に言う姐肌ってやつかな。)
などと思う暇もなく、あっというまに予定外の宴会の準備がはじまりました。
女が4人も入り乱れて、茨城君の部屋で
最初の大宴会がはじまりました。


(17)へつづく