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アイラブ桐生・第二部 14~16

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 壊れやすくしておくことも、実は大切な「技」です。
「見た目良く仕上げておいて、適度に壊れやすくしておく」
ことが肝心です。
丈夫に造りすぎると、次の仕事に差し障りがでます。
ほどよく消耗させて、壊れやすくしてことも、
作業の狙いのひとつです。
しかしイベント会場などでは、簡易に作りすぎたために、
いつ壊れるのかと、舞台裏で、
はらはらドキドキしすぎた時もありました・・・

 仕事に慣れてくると
漫画家志望の茨城くんの部屋と、私の部屋の往復がはじまりました。
どちらも青柳インテリァの社宅代わりとして、
借り上げてくれた部屋ですが、茨城君のアパートは、
現代版「ときわ荘」のような趣がありました。


 風呂なしで4畳一間が10室もあり
そこには自称絵描きや、見るからに怪しい美大の学生、
将来を夢見るマンガ家志望たちであふれていました。
日暮れと共に、どこからともなく住人たち以上の人数が集まってきます。
必ずどこかしらの部屋で、夜を徹しての芸術談義が始まりました。




 初めて茨城君の部屋へ寄りこんだ晩もそうでした。
開け放たれたドアからは次々に、見るからに怪しそうな人たちが
覗きにやってきます。



 「おう、新入りか、どこの部屋だ?」

 「いや、いまは満室だから部屋は空いていないはずだ。
 茨城の居候か・・」

 「専攻はなんだ、俺は多摩美で油絵だ。」

 「まてまて、こいつは俺と同じ仕事場の友人だ。
 今夜は二人で語りあう予定だから、そのあたりの話は明日にしてくれ。
 とりあえず、今日は2階のゴッホのところにでも寄ってくれ。
 ハイハイ、みなさん本日は解散、解散。」


 茨城くんは熱狂的な手塚治のファンです。
壁に書いた自作の鉄腕アトムは、大きなこぶしをまっすぐに突き出して
いまにも大空へ飛び出しそうな勢いがありました。