星と月と幽体
そのリズムは、単調なのだが、時にフッと引き込まれる間があった。いや引き込まれるという表現はあっていない、引き上げられるだろうか。次第に身体全体が浮いた気分になってきた。布団の重さも、自分の重さもが感じられない。
部屋の明るさが変わった気がして、オレは瞑っていた目を開けた。すぐ目の前に自分の布団があった。盛り上がった布団が……。ん? 誰かが寝ているのが、見えた。見覚えのある顔と、携帯音楽プレーヤーのイヤフォンが目についた。もしかしたら、これは? オレは自分の寝姿などを見たことがなかったので、すぐにはわからなかったが、寝ているこの男は自分のようだ。
ああ、これが噂に聞いていた幽体離脱か。まったく自然にそう思い納得した。すぐに移動出来るはずと思いつき、意識を外に向けた。身体は、抵抗もなくアパートの自室の上にあった。いや、これも身体と言えるかどうかはわからないが。
これはチャンスかもしれない……と、唐突に浮かんだ考えをもう実行していた。自室の2つ隣に可愛い女性が住んでいるのだ。普段、あいさつをする程度である。その女性の態度から、オレに興味は感じていないようだったので、話しかけることもなかった。でも、やはり若い女性には興味がある。
この幽体が物理的には障壁が無いことがわかったので、思念を彼女の部屋に向けた。こんな便利なことがあるなんて、とオレはニヤけてしまう。さっそく部屋に移動。見えた!
ええっ!