トレーダー・ディアブロ(3)
しかし、知識として黄金比率を知っていても、普通の人間が瞬時に未来のピンポン球の軌道を予測する事は不可能だ。西京にはピンポン球が跳ねて階段を落ちて来る軌道が、チャートとして見えていたのだろう。才能ある音楽家が持つ音階の感覚を絶対音感という。彼にはそれと似た絶対相場観とも言える感覚が備わっていたのかも知れない。
何度投げてもゴミ箱に入るピンポン玉を見て、グレリア氏は呟いた。
「お前は……、悪魔(ディアブロ)だ……!」
それが、西京育也が初めて悪魔(ディアブロ)と呼ばれた日であった。
作品名:トレーダー・ディアブロ(3) 作家名:砂金 回生