紅いスポーツカー
「昨日の披露宴に、れいちゃんと従兄の梶本さんも出席してくれたのよ。知ってた?」
「ま、マジっすか?だったら、紹介してくれればよかったのに!」
「なんだか、慎吾を騙しっぱなしという後ろめたさがあったのね。だからそれはできなかったの。でも、あのふたりはキューピッドだったわけよね。今度紹介するわ」
「ところで、何だかこの車騒々しく走ってない?」
「ごめんなさい。空き缶をたくさん繋いであるの」
「空き缶だって!?」
「そう。昔の映画で、新婚旅行に出発する車がそういう風にして走るシーンを観たことがあったの」
「これから先も、まだまだ騙されそうな、宿命のようなものを感じるよ。まあ、できるだけお手やわらかにお願いしたいなぁ」
「そうね。もう少し手加減しないとね」
そのことばを聞いた笹島は、なぜか心の片隅が疼くような気がした。
了