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もう一つの部屋

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 高槻は相変わらず内気な性格なのだが、不思議なことに斎田美貴となら臆することなく心の中を吐露できるような気がする。
「いらっしゃるんですか?じゃあ、コンビニで氷とウィスキーとつまみを買っておきます」
「そんなことしないでください。わたしがお料理をして持って行きます。もうひとつのお部屋にね」
「そうですか。もうひとつの部屋から美味しい料理が来るんですね。何だか、急に目の前が明るくなって来ました」
 高槻は感動していた。子供の頃からずっと絶望していた自分のような者にも、幸福が訪れることがあるのだと、信じられないことではあるのだが、今だけは信じて幸福感を味わおうと思った。
「そうですね。もうすぐ太陽が昇って来る時間ですからね」
 東の空が本当に明るくなってきた。道路も標識も光る街灯も、明るくなり始めた茜色の空に並ぶ雲も、歪んで見えるのは涙のせいだった。

              了











 




 







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