有刺鉄線
vol.13 運命
失ってしまったかもしれない・・・圭佑が一歩ずつ歩んでいた。人影を見て気づいた圭佑は明るい笑顔を見せて手を振った。
桐野行哉が彼らしくひっそりと訪ねて来て目立たない場所で圭佑のリハビリを見守っていたのだ。
藤崎は諦めた。
運命を変えることなどできはしない。
あのふたりがどういう関係を築いていくかは判らなくとも、圭佑がきっといつまでも行哉を思い続け、行哉も圭佑を慕い続けるに違いない。
俺はそれをずっと苦い気持ちで見つめていくしかない。
それでいいのだ、と思った。
圭佑は今はもう藤崎の犯した裏切りと暴行を受け流している。前と同じように、いやそれ以上に甘えている。
それが嬉しかった。
俺は圭佑から逃れることはできないんだ。
藤崎はサングラスをかけた。
圭佑と行哉が寄り添っているのを直に見るのは眩しすぎ、自分の潤んだ眼を見せるのは恥ずかしかった。