携帯電話
それに対し高見沢はここぞとばかりに、熟年男の威厳を滲ませながら、格調高く言い放ってしまう。
「あのね、お姉さん。
スマートフォンやケイタイで、なんぼコミュニケーションが便利になったと言ってもね・・・・・・人間社会は袖すり合うも他生の縁。
そのためには肉声での触れ合いが一番大切なのだよ、 そうでないとね、風情も情緒もないんだよ」
「えっ、それって・・・どういうことですか?」
お姉さんは余計に不思議な顔をしている。
「まっ、いいんじゃないの、お姉さんも熟女になる頃には、きっとわかると思うから」
高見沢は嫌味なことをついつい言ってしまった。
「熟女だって、イヤだあ・・・このオッチャン!」
女性スタッフは突然、普通の日々ある生活に戻ったようだ。
だがすぐにプロの販売員に返り咲き、
上から目線で。
「この最新型機種を捨てるということは・・・お客さん、もう時代の流れに乗り遅れるということですよ。 頑張ってついていかないと、ボケが始まりますよ」
ピンポーン。
まったくその通りだ。
お姉さんがおっしゃられるように、世間からは置いてけぼりとなる。