小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

カシューナッツはお好きでしょうか?

INDEX|72ページ/139ページ|

次のページ前のページ
 

64.ハルカ



「ハルカさん、おはようございます」

 私の新しいマネージャーは、とてもスタイルが良くて、とてもキレイな人だった。

 名前は高橋未実(たかはしみみ)、私は“未実(みみ)さん”と呼んでいる。未実さんは控えめな性格で、品のある人だった。でも、声に覇気がなくて、弱々しかった。しかも、笑顔がへたくそで、まるで顔面麻痺のようだった。

「未実さん、そんなに引きつった顔で笑わないでください。怖いです」

「あぁ……すいません。私昔から、笑顔がへたくそで……」

 そう言うと、未実さんはうつむいてしまった。こんなにキレイなのに、こんなに根暗だなんて、もったいない人だなぁ。

「それで、今日のスケジュールはどうなっていますか?」

「あ、はい! ちょ、ちょっと待ってくださいね」

 そう言うと、未実さんは手帳を開くことなく、直ぐにスケジュールを教えてくれた。全て暗記していたのだろうか?

「……わかりました。ありがとうございます。ところで、今日のお昼に、お友達とランチをしたいのですが、現場を抜けても大丈夫ですか?」

「あ、はい。大丈夫ですよ。今日のスケジュールでしたら、2時間ほどであれば問題ありません」

「それでは、お昼2時間ほど抜けますので、よろしくお願いしますね」

「あ、はい。あの、実は私も、今日のお昼……」

「すいませーん。マネージャーさんいますか?」

 突如、未実さんのか細い声を掻き消すように、若いディレクターの人がやってきた。

「ちょっと来てもらえます?」

 そして、「あぁ、あぁあ」とうなっている未実さんの腕をつかみ、乱暴に連れて行った。

「ふぅー……未実さん大丈夫かな?」

 一息ついた私は次の撮影が始まるまで休もうと思い、ソファーに座った。

「ん? これは?」

 ソファーの前にある机に、一冊の雑誌が置いてあった。その雑誌には『夏のグルメ大特集!』と書かれていた。この部屋には私と未実さん以外いなかったから、未実さんが置いていったのかな?

「わぁ! おいしそう!」

 私は暇つぶしがてらにその雑誌を読んだ。

「お! ここのイタリアンのお店おいしそうだなぁ。よし、今日の川島さんとのランチはここにしようかな」

 私はこのとき、このページの端っこが折られていることに、気付かなかった。