カシューナッツはお好きでしょうか?
4.ハルカ
『大切なのは、君が言う努力を何でもない日常に変えることだよ』
突如オーディション会場に現れた社長さんのこの言葉を聞いて、私は本気でアイドルを目指そうと思った。
最初は友達が「一緒にオーディションを受けてほしい」と泣いて頼んできたので、仕方ない気持ちでオーディションを受けに行った。テキトウに答えて、さっさと落選して帰ろうと思っていた。でも、突如現れた社長さんの言葉で、アイドルという職業に興味を持った。『憩いを届ける仕事』という言葉にグッときた。アイドルになりたいと思った。
「ハルカさん、スタンバイお願いします」
「あ、はい!」
あのとき、自分のオーディション番号が十五番で良かった。十二番よりもはやい番号だったら、きっと私はアイドル『カシューナッツ』のメンバーに選ばれなかったと思う。
そんなことを考えながら、私は眩いステージにつながる階段を、駆け上がった。
作品名:カシューナッツはお好きでしょうか? 作家名:タコキ