カシューナッツはお好きでしょうか?
34.警察官川島
俺が到着したときには、もうすでにストーカーは取り押さえられたあとだった。
「それじゃあ、こいつはハルカさんのストーカーだったんですね。……ハルカさんは無事だったのでしょうか?」
「無事でしたよ」
俺は思わず胸をなでおろした。
「それじゃ、このストーカーは俺が署まで連れて行くから、あとのことはよろしくな」
一緒についてきた先輩が、一足先に犯人を連れて行った。ストーカーの背中には『ハルカ LOVE』という文字があった。その文字を見ると、なんだかストーカーのことを憎めない自分がいた。
「それじゃあ、報告書を書くために、状況を聞かせて欲しいのですが。あと、現場も見せてください」
俺はとりあえず、自分の職務を全うすることにした。できることなら今すぐハルカちゃんに会いたいが、それは叶わぬ夢。業務を終えたらメールでもしよう。
俺はそんなことを考えながら報告書を鞄から取り出そうとした。そのとき、ハルカちゃんのマネージャらしき女性に声をかけられた。
「あの、お忙しいところ申し訳ないんですが、ハルカを家まで送り届けてくれませんか? ハルカ今、すごくおびえているんです。警察の方なら安心ですし……」
「はい! 任せてください!」
俺は報告書を鞄に押し戻し、即答した。
作品名:カシューナッツはお好きでしょうか? 作家名:タコキ