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32.ふけさん



「さて、どうしようか……」

 読者諸君、私の心配をしてくれてありがとう。でも、大丈夫。こんなこともあろうかと、ちゃんと命綱を巻いていたのだ。そのおかげで、私は無事だ。無事なのだが、困ったことに、今空中で宙ぶらりんの状態であり、そこから抜け出せなくなってしまったのだ。

「ふん! ふんふん!!」

 私は体を揺り動かし、振り子の要領でアイドルプロダクション『わっしょい』のビルの窓に手をかけようと努力した。

 ラッキーなことに、一番近くにある窓が開いている。あそこから進入しよう。

 私はそんなことを考えながら、まるで“ミノ虫”みたいに必死に体を動かした。


「あと、あと少し……」

 私の振り子運動は徐々にエネルギーを増して行き、あと一息で窓枠に手が届くまでになった。

「きゃああああ!!」

 私がめいいっぱい体を揺り動かし、窓に向かって突っ込んだとき、女性の悲鳴が聞こえた。何事だ! と思った瞬間、カッターナイフを持った謎のおっさんが急に目の前に現れた。

「もげぇ!!」

 そして、そのおっさんの顔に、振り子のエネルギーを蓄えた私の頭蓋骨が激突した。