カシューナッツはお好きでしょうか?
30.ハルカ
「はぁ……疲れた」
今日はいつもより忙しい日だった。プロモーション活動や定期公演、さらにはプロダクションオフィス館内のスタジオでダンスのレッスン。
気がつくともう、今日が終わろうとしていた。アイドルという仕事も楽じゃないなぁ……。私は窓から顔を出し、夜風に当たりながらそんなことを考えていた。
「はぁ……」
そして、6メートルくらいの距離にある、隣のビルの窓に映る少し疲れた自分の顔を見て、ため息をついた。
「はやく、社長さんに会いたいなぁ」
私はそんな願い事を呟いた。
「うわぁあああ!!」
すると、私の願いが通じたのか、目の前に社長さんが現れた。そして、一瞬で消えていった。
「え!? え、ええ!!」
幻覚!? でも、幻覚にしてはリアルだったような……。私が一瞬のありえない出来事に驚いていると、
「ピピピピピピ! ピピピピピピ!」
けたたましい警報音がプロダクション館内に鳴り響いた。え? 今度はなに??
「ハルカちゃん、みーつけた……」
私が振り返ると、そこには”ハルカ LOVE”と書かれた、アイドル『カシューナッツ』の限定Tシャツを着た、気味の悪いおじさんがいた。
おじさんはカッターナイフを持っていて、そのカッターナイフからは真紅の血がぽたぽたと滴り落ちていた。
作品名:カシューナッツはお好きでしょうか? 作家名:タコキ