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ぽんぽんゆっくりん
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novelistID. 35009
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スクランブラー

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「クククッそのツラ具合からして間違いねェようだな。アーハッハ、こりゃいいかも見つけちまったぜ!!」
「……何のことだ」
「すっとぼけなくてもいいぜ、良かったなぁ大財閥の御曹司で」
 詩歌には意味が分からなかった。

 詩歌が理解できてなかった一方、黒住麟はきちんと彼らの話に追いついていた。
 TVディレクターである黒住はある事件を思い出した。
 その事件とは、5年前、千葉のある集合住宅のマンションで起きた火災だった。
 この火災は事故によるものではなく、非常階段付近で放火されたもので、いわゆる放火殺人だった。
 この事件で放火された4階建てマンションの住民16人が死亡。
 死亡者の大半の死因は二酸化炭素による中毒死。
 深夜に行われた上、非常階段が火災発生源のため気付いた時にはすでに逃げれない状況だったらしい。
 放火事件としては異例の死亡者数のため、各TV局はこれを逃さなかった。
 もちろん黒住もスクープとして取り上げた。
 だが、この事件の取材は中断されることとなる。
 ある大企業が警察と報道陣に圧力をかけたのだ。
 結局、この事件のその後は良く分からず、犯人も捕まったのかどうかさえもうやむやになってしまった。
 だが黒住がこっそり裏で調べていくうちに圧力をかけたある企業が判明した。
 その企業の名は『倉敷総合財閥』―――
 会長は財界で名高い多間木道三―――
 子供はたしかたくさんいたはずだ。
 ひょっとすると目の前にいるこの多間木隆は道三の息子―――
「死んだんだろ? 16人」
「……」
 多間木は西村の言葉に顔を横に向けて黙っていた。
 それと同時に黒住の予想が当たったことが判明した。
 ―――コイツはスクープだ、まさかあの事件の関係者にこんなとこで出会えるなんて。
 黒住は手帳を取り出そうとしたが、無い事に気が付いた。
「ヤクのためとはいえ、良い度胸してるぜ坊や。俺のとこにくりゃ良かったのによ」
「なんで知ってんだ」
「ヒヒヒッ仕事柄その筋のことにはいつもアンテナ磨いてるからな」
「―――掛け取りのプロか。道理で」
 多間木は軽く微笑を浮かべた。
 ―――コイツらは犯罪者なんだ。それも生半可じゃない―――
 黒住はこれほどの興奮は久しぶりだった。
「何を言ってるのかサッパリなんだが」
 幣原が呆気にとられて言った。
「5年前の千葉の住宅街火災覚えてるだろ。その主犯がコイツなんだよ」
 西村が多間木に指をさした。
 周りのやつらの顔を見る限り、若い女子校生さえも覚えていたらしい。
 みな、多間木を見る目を変えた。
 ―――あぁ、バカ! なんでそんなこといっちゃうのよ!! せっかくのスクープがコイツらに横取りされたら―――
「おい、ディレクターの姉ちゃん」
「……えっなっ何!?」
 突然黒住は西村に呼ばれた。
 ディレクターとTV局でつねに呼ばれているためか、自分のことだとすぐに分かった。
「記事にすんのは止めときな。殺されるからよ」
「はっはぁ!?」
「こいつの家は裏社会にも君臨してんだ。アンタ一人消すぐらいわけないぜ」
 黒住は多間木がニヤニヤしながらこっちを見ているのが分かった。
 その笑みは、犯罪者の目とともに―――
 さっきの好青年ぶりが一変していた。
 黒住は背中に何か冷たいものを感じた。
「……人の心配してる場合かよ、掛け取り屋サン。アンタだっていつ消されるかわかんないぜ? まぁソレはこの部屋の連中全員に言えることだけど」