どぶゲボ!!~我慢汁馬路吉のオブツ道~
「マラ宮ァアアッツ、逃げんのかよおおおォォォオオオ!!」と、オレはほとんど無意識に叫んだ。
「おめえええみてえなゴキブリ野郎の蹴りなんて何発食らってもきかねええええんだよォオォォオオオ!!!」
次の瞬間、俺の怒号に我を忘れたマラ宮が肉山を振り切ってオレにとび蹴りを浴びせる。蹴りと同時にオレは後ろへ跳び、女子更衣室のある教室へ転がり込んだ。そのままキサラギの机のところまで激しい音を立てながらもんどうりうって、オレは閉めていた脇の力を解放する。学ランの隙間からブラを落とし、衝撃でめちゃくちゃになった教室の女子制服の中に紛れ込ませた。これでブラを放棄して、両手が自由になる。
オレはマラ宮との距離から蹴りを予測していた。全身にダメージは受けてしまうが、自然に女子更衣室に引き返すには、この方法しかなかった。
激昂したマラ宮はそこからオレに向かって走って飛び掛ると、馬乗りになる。オレの顔が陥没するまでマウントから滅多打ちにしようとするつもりだろう。オレはその瞬間、鼻の奥から咽喉へ流し込んでいた鼻血をマラ宮の顔めがけて大量に吐き出した。嫌がってのけぞるマラ宮。オレはその隙をついて、マラ宮の右手の指を両手で掴みにいく。マラ宮の薬指が偶然オレの手に引っかかり、オレはそれを離すまいと両手で自分の胸のところに引き寄せ、握りこむ。やった。そしてオレは叫ぶ。
「たあああすけえぇぇぇてえええっぇぇええあぁああっせええええんんんせええええええええええええぇぇええええ」
ほんの一瞬では、相手の指を握って泣き叫び助けを呼ぶというオレの行動の意図が、マラ宮には理解できなかっただろう。だが次の瞬間、肉山たち教師が後ろから数人がかりで駆け寄ってくるなり、ふたりを引き剥がすためにマラ宮を羽交い絞めにして抱えあげようとする。
オレはこの瞬間を狙っていた。
教師はまず無抵抗で泣き叫ぶオレではなく、興奮したマラ宮を先に封じ込めにかかり、一瞬だけ、一対多数、パワーバランスが崩れる瞬間があるはずだと。馬乗りになっていたマラ宮のケツがオレの腹から浮いた瞬間、オレは奴の指を握ったまま、
「こわいよぉおぉおおおおおああああああああぁぁおおぉおおおおお」と泣きじゃくりながら、全力で体重をかけてうつ伏せに寝返りを打った。
泣き叫んで寝返りを打つという、赤子同然の行動が、攻撃になる。
マラ宮の薬指の骨が、妙な音を立てて逆に折れた。
作品名:どぶゲボ!!~我慢汁馬路吉のオブツ道~ 作家名:追試