失態失明
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おい。
木漏れ日が淡く照らしてくれるのは、そこにお前がいるからじゃなく、そこにお前しかいないからだ。
風が優しく頬を撫でてくれるのも、雨の日の雨だって、そこにお前しかいないからお前を打つのさ。
今この瞬間でこそ、一面に敷き詰められた枯葉の絨毯をお前は一人歩くことが出来るわけだが、樹海は万人の誰の為にだって開かれてるのさ。
意識を持った肉の塊が自分の為だけに蠢いていても、鳥達は特段騒ぎ立てたりはしないさ。
お前は富士の急所を突き、消し去ることは出来ないが、こっちの世界に来れば、それを叶える可能性が少しは増えるかもしれない。
自在に操れる夢の中で、富士を消したことのあるお前だとしても、この富士の麓にいるのは偶然にすぎない。
現にお前はその夢を覚えちゃいない。
いずれにせよ、夢との因果関係は皆無と言ってもいいだろう。
そんなものは。
そんなものは、その日そこにお前しかいなかったから、そんな夢を見ただけさ。