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表と裏の狭間には 番外編―後日談―

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たった二人で。
昔、このメニューを兄に振舞ったことのある少女は、その大変さを実感していた。
(……二人分作ったときはなんとかなったけど、九人分となると大変だなぁ。)
途中で一人が抜けて、ケーキを持って帰ってきた。
それも、とても大きなものを。
二人で食べる分量ではなかった。
二人で談笑しながら料理を作り、やがてそれらは完成した。
出来立ての料理を綺麗に盛り付け、リビングのテーブルに運ぶ。
そのリビングも、クリスマスらしい飾りつけに満ちていた。
「……………。」
「……………。」
二人は、椅子に座って、何かを待っていた。
料理に手をつけずに、ただひたすら。
チクタクと、時計の針の音だけがリビングに響く。
その時だった。
『ピンポーン』と。
玄関のチャイムの音が鳴った。
それを契機に、二人の少女は我先にと玄関へ駆けていった。

勢いよく開け放った玄関の外には。
「あ…………あ、あ………あああああああ!」
「よう。久しぶりだな。」
「元気だったかしら?」
「変わりないようだね、二人とも。」
「……全然。」
「はは。何をそんなに驚いてるんすか?」
「無理もないことなの。」

「………ただいま。」

待ち望んでいた、姿が。
先頭には、二人が最も待ち望んでいた姿がある。
少女――蓮華は、その姿に向かって歩き出す。
少女――雫は、一番手を蓮華に譲った。
それが、雫の出した答えだったのだ。
そして、蓮華は、少年――紫苑の前に立った。
「……………紫苑。」
「なに?」
無言で、殴った。
『!?』
平手で叩くのではなく、拳で殴った。
少年は大地に倒れ伏し、後ろの六人は目を見開いている。
「テメェ紫苑!ボクがどれだけ心配したと思ってるんだよ!生きているなら生きている出、連絡の一つくらい寄越しやがれ!!」
蓮華がそこまで叫んだところで、紫苑の後ろから笑いが起きた。
とうとう、こらえきれなくなったようだ。
「ちょ………グー!?そこ、グーで殴る場面!?」
「いや……クク、予想の斜め上すぎるぜ………アハハハハ!!」
「本気で心配したんだからな……本当に……戻ってきて……………よかっ………うわああああああん!!」
そこまで言ったところで、耐え切れなくなって、紫苑に抱きついて泣き始めてしまう。
前では泣かれ、後ろでは爆笑され、紫苑はとても複雑な気持ちになった。
「いや、お前ら、今はシリアスなシーンなんだけど。」
いい加減止めろ、と紫苑は言った。
蓮華を支えて立ち上がり、紫苑は再び言った。
「ただいま、レン。」
「おっ…………お、おかえ…………お帰り………なさい………ッ!」
涙と嗚咽で途切れつつも、その帰宅を、蓮華は歓迎した。
「雫も。ただいま。」
「お帰り、お兄ちゃん。」
雫は、涙を流しつつも、精一杯の笑顔で、そう応えた。
「さ、皆入って!パーティーの準備は、出来てるよ!」

その夜。
主を取り戻したその家に、再び活気が戻った。
これまでどおり、そして、これまでとは微妙に違う、新たな日常が刻まれていくことだろう。
翌日、彼らは周辺住民から苦情を言い渡されるのだが、それはまた、別の話だろう。

The true end…