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アイ・ラブ桐生 第一部 7~8

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 輪島?・・どこだっけ・・・・


 たしか能登半島にあるはずで、それも突端のほうにある町だ・・・
ということは、富山県の先で・・・・石川県かよ!。





 もうすこしで急ブレーキを踏むところでした。

 おい・・能登半島かよと、レイコを見つめると
「あら、ちょっとだけ遠すぎるの?」と、涼しい目が見つめ返してきます。


 「それとも、そんなにも、お休みはとれないの?」

 まっすぐなレイコの目がさらに迫ってきました。
まじまじと、穴があくほど見つめてくるレイコの瞳には、何故か断わるのが
気の毒なほど、切羽詰まった思いと、真剣なお願いの色が濃厚に浮かんでいました。
(付き合ってやるか、こいつと。本気でまた泣き出しそうな気配だもの・・・・)
まァ、仕事のほうは・・・
祭りの最中は開店休業中みたいなものだから、
明日の朝にでも電話をすれば、3日くらいは休めるだろうと、
目線を外して返事を返しました。



 「じゃァ、連れてっ。」

 それだけいうとレイコはまた、
窓ガラスに顔をくっつけたまま、真っ暗な外の景色を見はじめました。
いまなら石川県まで行くのも、関越道から北陸高速道を走り、
能登の有料道路を走れば、6~7時間の道のりで到着をします。
しかし当時はまだ、すべての高速道路がいずれも
急ピッチで工事中でした。



 このまま北上していたのでは、遠回りになりすぎます。
どこか途中から、西北方向へと進路を変えて、斜めに富山方面に進む道が無いものかと
頭の中で考えましたが、さっぱり道が思いあたりません。
仕方ないかと・・・
適当な空き地を見つけて車を止め、ダッシュボードから地図帳を
取り出して、行くべき進路を検索することにしました。



 ついでに目線をむけた助手席には、
目をつぶったまま寝入っている、レイコの白い横顔がありました。
わずかな月の光に照らしだされたその横顔には、
乾いてまだ間もないと思われる、涙の筋が浮かんでいるのを見つけてしまいました。

 何も見なかったふりをして、後部座席からタオルを引き寄せると、
それを頭ほうからかけてやりました。
そうじゃないの、という様にふわりとタオルを顔にかけ直し、
くるりとレイコが向こう側へ、寝がえりを打ちました。

(起きていたんだ、こいつ・・)

 結局、最短コースらしきものは、いくら探しても見つからず、
六日町から日本海沿いの上越市へなら縦走が出来そうなので、
なるべく国道を拾いながらそのまま北上することにしました。
どうせ、出発した時から迷子の旅路です。
すこしくらい迷ったところで軽傷で済むだろう・・などと考えながら、
右も左も見えない真っ暗な山道をさらにまた走ること、2時間余り。
ようやく白みかけてきた朝空の下に、
まっ黒にただよう水面が見えてきました。




日本海です。



 真夏の夜明けは早く、午前4時頃になると、
もう空が明るく白みます。
漆黒だった夜空も、濃紺から薄い青へとグラデーションを変え、
さらに白っぽく変わったかと思うと、日の出の間際からまた
紺碧の青空がもどってきます。
しかし、空が明るくなったとはいえ、太陽が登りきるまでには、
まだ1時間以上もかかります。
明けそうで開けない、おいらの人生みたいだ・・
とつぶやいていたら、




 「わたしの悪口だろう・・・」

 レイコが目をさましました。
ひとの返事を聞く前に、右手に広がる日本海の広がりを見て、
やった~と叫んで、助手席から身体を元気よく跳ね起こしました。



 「わぁ~日本海だ!」

 海なし県の本性が丸出しです・・・・
海を見るだけでも、この大はしゃぎぶりです。
海と出あう感動が大好きで、なにかにつけて海なし県の人たちは、
遠い道を、はるばると走ってひたすら海へと道を走ります。
たぶん例外なく、レイコもその一人です。



 「どの辺?」


 走り始めたのが、昨夜の9時頃ですから・・
かれこれ、8時間以上は走りっぱなしです。


 「上越市は今過ぎたから、(目標の)半分と、すこしかな・・」

 「そう、止めて。運転を変わる」

 そう言って車を停めさせたレイコは、
後ろからバックを引き寄せてシャツを一枚、無造作に取りだしました。
着替えるつもりなのでしょうか・・・・
目線を合わせたレイコは、にっこり笑ってから、車を降りて行きました。
やれやれ、心配した車内でのストリップだけは回避ができたようです。
しかしほっとできたのは、つかの間でした。

 車から降りたレイコは、日本海にむかって
腰に手を当てたまま、胸を反らして仁王立ちになりました。
そこまではごく普通の光景と、車内から安心をして見つめていたのですが
そこから先の早技が、実に凄い事になってしまいました。



 シャツとG-パンを一気に脱ぎ棄てると
躊躇することも無く、すべての下着もあっというまに脱いでしまいました。
惜しげもなく日本海に全裸をさらしたまま、レイコが悠然と
M子から調達してきた下着と衣服に着替えを始めました。
あっけにとられたまま、茫然としている運転席へ、
笑顔のレイコがやってきました。


 「昨日なんかは脱ぎすてたわよ。
 なんだかんだとも、綺麗さっぱり、サヨウナラだ!。 
 さぁ、行こうぜ!
 希望に燃えて、輪島まで!」

 私を助手席に追いたてて、すこぶる元気よく、
レイコが運転席へ乗り込んできました。
じゃあ頼むぜ運転、と言いつつ、助手席のシートを、
リクライニングに倒した次の瞬間、
車がタイヤを軋ませて、一気のダッシュで飛び出しました。
忘れてた・・・こいつは、
もともと暴走タイプの飛ばし屋です。


(9)へつづく