TranceMix! 1話
『機械兵が前線班にたどりつくまで後300m!』
今回の作戦。必ず1人にならないこと。
いくら前線班全員が5人を相手取れるほど強い、とはいっても、それ以上の人数に囲まれたらひとたまりもない。
だからだ。
機械兵のものであろう足音が聞こえてきた。
それがどんどん近付いてくる。
僕らのところまであと10m、9m、8m、7m、6m…
今だ!!
「燃えろ!!!」
セイジは自分の出し切る最大出力の炎魔法を放つ。
目の前の森、それと同時にそこにいる敵部隊が燃える。
「ガキどもを発見!直ちに戦闘に……」
無線で本部に連絡していたであろう機械兵を、ヒトミが斬り捨てる。
「敵に攻撃の隙を与えんな!!どんどん攻撃しろ!!!」
セイジの隣で敵に向けて銃をぶっ放しているコウキが叫ぶ。
……セイジの出番はまだだ。コウキがリロードに入った時、その時をねらって、魔法を放つ。
その間に、コウキがリロードを済ませ、また乱射。
それで倒しきれなかった敵は、ヒトミや、ユウタ達に任せる。
これがメイン戦法だ。
ガチャ、ガチャ
コウキがリロードに入る。今だ!
「雷よ、降り注げ!!!」
今度は森の全域、味方がいないところ全域に全力の雷魔法を放つ。
「「やったか!?」」
「おい、どうだ、通信班?」
『ただいまの雷魔法で、敵部隊は残り1部隊(30人)になりました!!』
「「「よっしゃ!!あと一息!!!」」」
あともう少しで勝てる!そう思った。
『………!?て、敵の数がどんどん減ってます!!』
…?誰も攻撃していないはずだ。というか攻撃以前の問題に、敵の姿が見えないから攻撃のしようがない。
なのにどんどん減っている…?
「どういう事?」
ヒトミが聞く。すると、
『!!り、理由がわかりました!!!』
かなり驚いた感じだ。
『敵がどんどん融合していきます!!』
「ゆ、融合!!?」
『はい、只今、1人にまとまりました……凄い速度でそちらに向かってます!!!気を付けてください!!』
ガンッ!!!
凄いスピードでやってきた敵兵は、そのままの直線状にいたヒトミを蹴り飛ばした。
「ヒトミ!!」
セイジが駆け寄って行くとヒトミは、大丈夫、と言って立ち上がる。
どうやら、寸前に刀で力を受け流していたらしい。そのせいだろう。刀に大きな亀裂が入っている。
これじゃ、ヒトミは戦う事が出来ない。なぜならヒトミは魔法が苦手だから。特にコントロールが異様に悪い。
ん…?
今、敵兵は動きが鈍い。コウキがそこを狙って撃ってるのだが、効いている風ではない。全て、身体の表面上で跳ね返されている。
セイジは、自分の魔法ならなんとか出来るかも、そう思ったが今さっきの雷魔法を使った反動で、今すぐには魔法が出せない。
「どうするセイジ!?」
コウキが敵兵に向けた拳銃を放ちながら聞いてくる。
「どうするって言っても、結局足止めを続けるしかないだろ!」
そう。この戦いにおいて、セイジ達戦闘班は本部のみんなが逃げ切るまで耐えれれば、それでいいのだ。
「分かった!!」
そう言ってコウキは拳銃を腰のホルダーにしまう。
そして、
「凍れ!!!」
凍結魔法を放つ。
コウキの放った凍結魔法は、そのまま敵兵にあたっ…てはいなかった。
コウキが外した訳ではない。敵の動きがいきなり素早くなって、そのままかわしたのだ。
「んなっ!?」
コウキ他、その場にいた全員が驚く。
敵の動きが急に速くなったからだ。
そしてそのまま、一番近くにいたユウタに殴りかかる。
ガスッ
「うぐっ!」
咄嗟の出来事だったが、なんとかガードは出来ているようだ。
それでも、2〜3mは吹き飛ばされている。
だが、敵兵はさらに追い打ちをかける。
「ユウタァ!逃げろぉ!!!」
コウキが凍結魔法を放つ。
だが、敵兵は軽やかにかわしてしまう。
ピンチだ。だがしかし。ユウタが不敵に笑う。
「くらえ!!」
ユウタが何の詠唱もなしに水魔法を繰り出す。
ユウタまであと5cm位まで近づいていた敵兵はユウタの繰り出した水魔法をかわすことが出来ず、そのまま吹き飛んだ。
「今だセイジィ!!思いっきりやれ!!!」
セイジはもう魔法が使えるようになっている。
「分かった!!」
そう言い、全力の雷魔法を放つ。
ドォン!!!
敵兵に命中。あの素早い敵兵でも、雷をかわすことは出来なかったようだ。
それに敵兵は機械。雷はよく効くだろう。さらに今さっきの水魔法で全身が濡れている。
バタン
敵兵が倒れる。
それと同時に、
「「「よっしゃあーーーー!!!!」」」
みんなの歓喜の声を上げる。
『おめでとうございます!!!』
通信班の声の後ろでも、歓喜の声が聞こえてくる。
『研究班より伝言が1つあります。”今倒したそいつを連れ帰れ”だそうです』
その一言で、少なくともセイジのテンションはガタ落ちした。
そして、1人だけ無傷のセイジが運ぶ事となった。
作品名:TranceMix! 1話 作家名:ざぶ