はるかぜ
03ぶらこんのつぶやき
「あら」
かかってきた妹の電話を終えて、梅こぶ茶とおせんべいをお盆に乗せて部屋に戻ると、ベッドの上にぷよが生まれていた。ぷよぷよにでてくるあのぷよんとしたものに似た膨らみってことね。
「あらあらあら」
とりあえずお盆をちゃぶ台の上に置き、章はベッドの上にできた膨らみを見つめた。
ぽんぽんとお布団を叩いてみる。
「こらこら、人のお布団でなにをやっているの。早くでてきなさい」
傍で数十秒待っても反応はかえってこなかった。可笑しいなと思い始めた章はそっとお布団をめくってみた。
めくった間から鼻水を啜る音が聞こえて、煌めく涙目の碧眼と目が合った。
「あら。マジ泣きしているの、シンヤ」
「見ればわかりゅだりょ、アキラ」
しくしくと嘆きながら深夜と呼ばれた金髪碧眼の青年はベッドの上で丸くなっていた。
それを見ていた章は顔に手を添えて困ったわねーと呟いている。
「せっちゃんならいざ知らず、深夜が泣いても可愛くないからやめてちょうだい。むしろ見苦しい」
「落ち込んでるだろ! 優しくしてくれよ!」
「やーよ。なんで付き合ってもいない、勝手にベッドにもぐりこむような男に構わないといけないの。はいはい早くでてきて。お茶にしましょう。話くらいはきいてあげるわ」
慣れている章は手際よく追い出すとちゃぶ台の傍に座らせた。深夜の鼻先は少し赤くなっていた。章は梅こぶ茶を彼の前に置く。
「どうしたの。彼氏に浮気がばれたの。それとも三股しているのがばれたの。どうなの」
「おまえ、そこまでオレのことが憎いか」
半眼になった深夜はじとりと章を睨んだ。くすくすと笑う。
「うそうそ。それでどうしたの」
「せつりが」
「うん、せっちゃんが」
「恋人できたって」
「くたばれぶらこん」