20日間のシンデレラ 第4話 何にも焦ることなんかない
恵 子 「えぇ……確かに黒魔術は教えたけど……何でだったかしら?」
考え込んでいる恵子。
諦めたように、にこっと笑って、
恵 子 「もういいじゃない。 ここにあるのは今だけよ」
わいわい盛り上がってる方に視線を向ける恵子。
立ち上がって大きな声で話している米川。
米 川 「実はイダセンのバイクに勝手に乗ったり、叩いたりしてたのは僕です。 すいません!」
イダセン、笑いながら、
イダセン 「米川ーー罰としてお前が社長になったら先生に高級なバイクを買う事。これ絶対な」
生徒達の笑い声が響く。
みんな満面の笑みで、懐かしさに浸っている。
その光景を見て自然と笑顔になる陸。
陸 「そうだな」
恵子と陸が話している様子を見ている、花梨と夏美。
夏 美 「ほらっ花梨、まだ陸と話してないんでしょ」
花 梨 「いや何か恵子と話してるみたいだし、また後で……」
夏 美 「いいから行ってきなさいっ!」
花梨をどんっと後ろから突き飛ばす夏美。
わっとなり陸の席の側まで近づいてしまう。
とっさに恵子と目が合う花梨。
ふーっと一息つく恵子。
恵 子 「どうやら私はお邪魔みたいね……そろそろ失礼するわ」
席を立ち上がりすたすたと戻っていく。
その先には、その場に突っ立っている花梨が。
恵子、すれ違い際に小さな声でぼそっと、
恵 子 「頑張ってね……シンデレラ」
一瞬、驚くがすぐに笑顔になる花梨。
ゆっくりと陸の席に向かっていく。
こちらに向かってくる花梨に気がつく陸。
驚き固まっている。
すぐ側までやってきて陸に声をかける花梨。
花 梨 「久しぶり……」
陸 「あぁ、久しぶり……来てくれたんだな……」
花 梨 「うんっ……あっ、隣いい?」
ほんのりと漂う香水の匂い。
髪は最後に見た小学生の時より、かなり伸びて少し茶色味がかかっている。
顔はよく見たら分かるぐらいのメイクがうっすらとされていて、どこか大人びた印象を受ける。
陸 「何か……変わったな」
花 梨 「そうかな? 自分では全然分からないや。 私は陸のほうが変わった気がする」
陸 「変わって……いや……」
言うのを途中でやめて、急に真剣な表情になる陸。
何かを考えている様子。
次第に笑みを浮かべ、
陸 「少し変わったのかもな」
陸の目を見ながらうんうん頷いている花梨。
花 梨 「そうなんだ……今は何してるの?」
何も迷いがないような自信に満ちた表情の陸。
少年のように生き生きと瞳を輝かせて一言。
陸 「絵本作家だよ」
――つづく――
――第4話 「何にも焦ることなんかない」 完――
作品名:20日間のシンデレラ 第4話 何にも焦ることなんかない 作家名:雛森 奏