「哀の川」 第二十一章 二人の絆
第二十一章 二人の絆
二人は深い眠りに入っていた。鳥の声で目が覚めた由佳は昨日の出来事を思い出していた。起き上がってシャワーを浴びに向かった。純一のものが中に入っていた。不思議な感じがした。もっと怖いかと思っていたのに、全然逆に感じていたからだ。シャワーが流れ落ちる風呂場の床に赤いものが混じっていた。大人になった・・・純一とこれからは他人じゃないんだ、そんな感情と共に嬉しさがこみ上げてきた。
純一は隣に由佳がいないことに気付き、探した。シャワーの音が聞こえて、自分も一緒にと風呂場に入った。
「由佳!入るぞ、いいだろう?」
「純一さん・・・こんな明るいところで、イヤ!待っててすぐに終わるから」
「いいじゃないか!いまさら・・・」
扉を開けた。こちら向きに由佳の全身が目に入った。
「イヤって言ってるのに・・・恥ずかしいから。男の人ってそういうことがわからないのね!好きだとか、仲が良いからとかは、関係ないことなのよ」
「怒るなよ・・・一人で居るのがイヤなんだよ。いつも一緒に居たいから」
「そんな、白々しい事を・・・裸見に来たんでしょう?」
「・・・それもあるよ、いけないの?」
「そういう事をする純一さんは嫌い!大人で居て欲しいわ。可愛いって言ってくれるのは嬉しいけど、私も女性よ。恥ずかしいことはイヤ、なの」
「解ったよ・・・もうしないから、機嫌直して」
由佳の均整の取れた身体を目にした純一は、由佳が正視できない状態に下半身がなっていた。それに目が行った由佳は、
「だから・・・言ったでしょう!そんなふうになって・・・純一さんは恥ずかしくないの?見せて?」
「うん、由佳なら、恥ずかしくないよ。だって自然なんだもん」
「自然じゃないわよ!不自然!そんなもの見せて・・・私は喜ばないわよ」
しょぼんとして、由佳とすれ違い、シャワーを浴びた。完全に下向きになってしまった自分自身を情けなく見つめて反省している純一だった。
着替えて台所に行った純一を由佳は先ほどのことが無かったかのように、明るく迎えた。
「座ってて、今すぐパン焼けるから・・・コーヒーがいい?冷たい牛乳か・・・アイスティーにする?」
「温かいコーヒーがいいなあ、朝はやっぱり」
「へえ〜大人ぶってるじゃない」
「なんてことを!口が悪くなったね」
「あなたがそうさせるのよ!変な事ばかりするから・・・」
「あ〜あ、またそれか・・・一生言われそうだなあ、変態扱いか?」
「そうよ、イヤならもうしないでね。あっ!そうだ・・・私さっきシャワー浴びていて、血が少し流れたの・・・生理が来たんじゃないわよ、その・・・女になったって事・・・」
「そうなんだ!ボクが初めてだったんだね、その証拠があったんだね」
「うん、初めからそう言っているけどなんだか実感して、嬉しかった。純一さんと確かに一つになったって思えたから・・・」
「言ってくれてありがとう。由佳はボクのものだよ、誰にも渡さない。由佳もそうしてくれよ」
「もちろんよ、誰も好きになんかなれないから・・・さあ、食べましょう!私も同じホットコーヒーにした。今日は大人の気分になりたいから」
プルプルプル・・・純一の携帯電話が鳴った。正しくは母親の携帯だが、持ってきていた。カバンから取り出して出た。
「はい、純一です・・・ああ。ママ、どうしたの?」
「何時ごろに帰ってくるの?ママたちオークラへ食事に行こうかと思っているの。姉も一緒よ。夕方に間に合うなら、あなたも来て!」
「そうなんだ・・・じゃあ、多分昼済ませて向かう予定だから、6時には着けるよ。ママ、お願いがあるの?由佳も連れて行って構わない?」
「早見さん?・・・いいわよ、一緒に来なさい。じゃあ切るわよ、6時にね」
由佳は初めて携帯電話を見た。珍しそうに眺めて手に取ってみた。
「こんなところでも話せるのね、便利よね。純一さんが持ってるの?」
「いや、そう言われたんだけど、贅沢だからって断った。これは母のだよ。最近この辺りにも電波が届くようになったみたい」
純一は帰りにオークラで自分の家族と一緒に食事をしようと由佳を誘った。由佳は一度家に帰ってから着替えて出かけたいと言った。
純一と由佳の最高の思い出を乗せて電車は東京駅へと向かっていた。振り返れば、少し前までは全然知らなかった由佳と数ヶ月でこんな関係に発展したことが縁があるんだなあと、隣で手を繋いで座っている由佳を見て感慨にふけった。
由佳も考えていた。中学の頃から憧れていた純一と同じ学校になって、同じ部活に入って、想いを告白して、あっという間に男女の関係になれた。急に大人びた自分がおかしくもあり、嬉しくもあり、今までしなかった化粧もこれからは純一と居るときはしようと考えていた。帰ったら母親に相談して、化粧してから出かけようと純一には内緒で思っている。
少女から大人になってゆく女の心と身体は磨かれてこそ美しくなる。好きな人にきれいに見られたい・・・その想いが服装や化粧や仕草に現れる。そうではない人との差は歴然になってくる。由佳は純一に愛されるようにいい女になりたいと願っている。まだまだ身体は作られてゆくだろう。おっぱいだって大きくなるだろうし、身体のラインもきれいになれるから、その成長も待ち遠しく感じていた。
電車は東京駅に着いた。中央線で神田まで行き、少し歩いて由佳は自宅へ戻った。純一は反対方向の渋谷へ山手線で乗り換えた。6時に赤坂見附の駅で待ち合わせの約束をしていた。家に着いた純一は母と直樹がすでに居ない事に気付いた。祖母が出てきて、お帰りと言ってくれた。未来は裕子と居間で遊んでいたから、純一を見つけて「じゅん・・・」と言って駆け寄って来た。さっと抱き上げて、純一は頬擦りをした。その仕草が父親のように見えたので、裕子は笑顔になった。
「純一も変ってきたね・・・すっかりいい大人みたい、フフフ・・・」
「いい大人ですよ、裕子伯母さん・・・ゴメン、裕子姉さん」
「あら、気遣ってくれているのね。嬉しいわ。合宿・・・じゃない、お泊りは楽しかった?ねえ、少し話してよ、どうだったのか・・・」
「ええ〜、知りたいの?う〜ん、世話になったから言わないといけないよね・・・」
純一は裕子にロッジの世話をしてもらってたから、仕方なく昨日までの事を話し始めた。
「若いっていいわね・・・青春してるって感じられたわ。私にもそんな頃があったのかしらねえ・・・たくさんの人に声かけれられてちょっといい気になっていたから、本当の恋がしてこれなかったの。いけないと知っていても、美津夫さんとの不倫に夢中になって・・・今は結果オーライになっているけど、あなたのように正しくお付合いをして結婚へと向かうのが理想ね」
「裕子さんだから話すけど、杏ちゃんのことは本当に好きだったの・・・大人になったら結婚したいと考えていた。でも冷静になって考えたら、22歳年上のしかも伯母・・・婚姻届も出せないんだよね。今は由佳のこと大好きだしこのままずっと付き合ってゆけそうに思うけど、なんだか迷惑かけちゃったなあって・・・時々落ち込むよ」
二人は深い眠りに入っていた。鳥の声で目が覚めた由佳は昨日の出来事を思い出していた。起き上がってシャワーを浴びに向かった。純一のものが中に入っていた。不思議な感じがした。もっと怖いかと思っていたのに、全然逆に感じていたからだ。シャワーが流れ落ちる風呂場の床に赤いものが混じっていた。大人になった・・・純一とこれからは他人じゃないんだ、そんな感情と共に嬉しさがこみ上げてきた。
純一は隣に由佳がいないことに気付き、探した。シャワーの音が聞こえて、自分も一緒にと風呂場に入った。
「由佳!入るぞ、いいだろう?」
「純一さん・・・こんな明るいところで、イヤ!待っててすぐに終わるから」
「いいじゃないか!いまさら・・・」
扉を開けた。こちら向きに由佳の全身が目に入った。
「イヤって言ってるのに・・・恥ずかしいから。男の人ってそういうことがわからないのね!好きだとか、仲が良いからとかは、関係ないことなのよ」
「怒るなよ・・・一人で居るのがイヤなんだよ。いつも一緒に居たいから」
「そんな、白々しい事を・・・裸見に来たんでしょう?」
「・・・それもあるよ、いけないの?」
「そういう事をする純一さんは嫌い!大人で居て欲しいわ。可愛いって言ってくれるのは嬉しいけど、私も女性よ。恥ずかしいことはイヤ、なの」
「解ったよ・・・もうしないから、機嫌直して」
由佳の均整の取れた身体を目にした純一は、由佳が正視できない状態に下半身がなっていた。それに目が行った由佳は、
「だから・・・言ったでしょう!そんなふうになって・・・純一さんは恥ずかしくないの?見せて?」
「うん、由佳なら、恥ずかしくないよ。だって自然なんだもん」
「自然じゃないわよ!不自然!そんなもの見せて・・・私は喜ばないわよ」
しょぼんとして、由佳とすれ違い、シャワーを浴びた。完全に下向きになってしまった自分自身を情けなく見つめて反省している純一だった。
着替えて台所に行った純一を由佳は先ほどのことが無かったかのように、明るく迎えた。
「座ってて、今すぐパン焼けるから・・・コーヒーがいい?冷たい牛乳か・・・アイスティーにする?」
「温かいコーヒーがいいなあ、朝はやっぱり」
「へえ〜大人ぶってるじゃない」
「なんてことを!口が悪くなったね」
「あなたがそうさせるのよ!変な事ばかりするから・・・」
「あ〜あ、またそれか・・・一生言われそうだなあ、変態扱いか?」
「そうよ、イヤならもうしないでね。あっ!そうだ・・・私さっきシャワー浴びていて、血が少し流れたの・・・生理が来たんじゃないわよ、その・・・女になったって事・・・」
「そうなんだ!ボクが初めてだったんだね、その証拠があったんだね」
「うん、初めからそう言っているけどなんだか実感して、嬉しかった。純一さんと確かに一つになったって思えたから・・・」
「言ってくれてありがとう。由佳はボクのものだよ、誰にも渡さない。由佳もそうしてくれよ」
「もちろんよ、誰も好きになんかなれないから・・・さあ、食べましょう!私も同じホットコーヒーにした。今日は大人の気分になりたいから」
プルプルプル・・・純一の携帯電話が鳴った。正しくは母親の携帯だが、持ってきていた。カバンから取り出して出た。
「はい、純一です・・・ああ。ママ、どうしたの?」
「何時ごろに帰ってくるの?ママたちオークラへ食事に行こうかと思っているの。姉も一緒よ。夕方に間に合うなら、あなたも来て!」
「そうなんだ・・・じゃあ、多分昼済ませて向かう予定だから、6時には着けるよ。ママ、お願いがあるの?由佳も連れて行って構わない?」
「早見さん?・・・いいわよ、一緒に来なさい。じゃあ切るわよ、6時にね」
由佳は初めて携帯電話を見た。珍しそうに眺めて手に取ってみた。
「こんなところでも話せるのね、便利よね。純一さんが持ってるの?」
「いや、そう言われたんだけど、贅沢だからって断った。これは母のだよ。最近この辺りにも電波が届くようになったみたい」
純一は帰りにオークラで自分の家族と一緒に食事をしようと由佳を誘った。由佳は一度家に帰ってから着替えて出かけたいと言った。
純一と由佳の最高の思い出を乗せて電車は東京駅へと向かっていた。振り返れば、少し前までは全然知らなかった由佳と数ヶ月でこんな関係に発展したことが縁があるんだなあと、隣で手を繋いで座っている由佳を見て感慨にふけった。
由佳も考えていた。中学の頃から憧れていた純一と同じ学校になって、同じ部活に入って、想いを告白して、あっという間に男女の関係になれた。急に大人びた自分がおかしくもあり、嬉しくもあり、今までしなかった化粧もこれからは純一と居るときはしようと考えていた。帰ったら母親に相談して、化粧してから出かけようと純一には内緒で思っている。
少女から大人になってゆく女の心と身体は磨かれてこそ美しくなる。好きな人にきれいに見られたい・・・その想いが服装や化粧や仕草に現れる。そうではない人との差は歴然になってくる。由佳は純一に愛されるようにいい女になりたいと願っている。まだまだ身体は作られてゆくだろう。おっぱいだって大きくなるだろうし、身体のラインもきれいになれるから、その成長も待ち遠しく感じていた。
電車は東京駅に着いた。中央線で神田まで行き、少し歩いて由佳は自宅へ戻った。純一は反対方向の渋谷へ山手線で乗り換えた。6時に赤坂見附の駅で待ち合わせの約束をしていた。家に着いた純一は母と直樹がすでに居ない事に気付いた。祖母が出てきて、お帰りと言ってくれた。未来は裕子と居間で遊んでいたから、純一を見つけて「じゅん・・・」と言って駆け寄って来た。さっと抱き上げて、純一は頬擦りをした。その仕草が父親のように見えたので、裕子は笑顔になった。
「純一も変ってきたね・・・すっかりいい大人みたい、フフフ・・・」
「いい大人ですよ、裕子伯母さん・・・ゴメン、裕子姉さん」
「あら、気遣ってくれているのね。嬉しいわ。合宿・・・じゃない、お泊りは楽しかった?ねえ、少し話してよ、どうだったのか・・・」
「ええ〜、知りたいの?う〜ん、世話になったから言わないといけないよね・・・」
純一は裕子にロッジの世話をしてもらってたから、仕方なく昨日までの事を話し始めた。
「若いっていいわね・・・青春してるって感じられたわ。私にもそんな頃があったのかしらねえ・・・たくさんの人に声かけれられてちょっといい気になっていたから、本当の恋がしてこれなかったの。いけないと知っていても、美津夫さんとの不倫に夢中になって・・・今は結果オーライになっているけど、あなたのように正しくお付合いをして結婚へと向かうのが理想ね」
「裕子さんだから話すけど、杏ちゃんのことは本当に好きだったの・・・大人になったら結婚したいと考えていた。でも冷静になって考えたら、22歳年上のしかも伯母・・・婚姻届も出せないんだよね。今は由佳のこと大好きだしこのままずっと付き合ってゆけそうに思うけど、なんだか迷惑かけちゃったなあって・・・時々落ち込むよ」
作品名:「哀の川」 第二十一章 二人の絆 作家名:てっしゅう