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茶房 クロッカス 最終編

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 結婚式も無事に終わり、優子は俺の所で一緒に暮らすようになった。まあ、夫婦になったのだから当然だけど……。
 沙耶ちゃんは良くんと市内に新しいアパートを借りてそこで暮らしながら、今も俺の店を手伝ってくれている。
 そして店が終わる頃には大抵良くんが迎えに来て、二人は仲良く帰っていく。
 優子は今も保険の仕事を続けながら、家事もきちんとこなしてくれて、俺たちはそれぞれに幸せな毎日を過ごしていた。
 平穏な日々が変わりなく過ぎてゆき、季節はいつしか夏へと変わって行った。

 京子ちゃんが京平と初めて店に来てから、今年で三回目の夏を迎える。
 だけど最近は、京子ちゃんはあまり姿を見せていない。
 仕事が忙しいのか、もしかしたら新しい彼氏でもできたのか……。もしそうなら、それに越したことはないのに……と思う。

 その日も朝から暑くて、誰も皆、どうしてもの用事がない限り表には出たくはないのだろう。客足も幾分減ってきているような気がする。
 俺は手持ちぶさたで、何気なくウィンドウの外を眺めていた。すると、一人の男性が駅の改札を抜け、真っ直ぐこちらへ向かって歩いて来る。
 ただ顔は終始下を向いているので見えない。
 どう見ても二十歳そこらの若者なので、どうせうちに来るわけではないだろう。若者は大抵、お茶を飲むにしても行くのはフランチャイズの若者向けの店に行き、間違ってもここへ来るなんてことはまずないから。
 そう思いながらも何故か、その男から目を離すことができないでいた。
 するとその若者は、何も迷うことなく真っ直ぐ店の前まで歩いて来て、まるで意を決するように顔を上げてこちらをじっと見た。