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茶房 クロッカス 最終編

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 最後が両親への花束の贈呈式だ。
 ほとんどの内容を若者優先で進めてきたけど、この花束贈呈だけは順を変えてあって、俺たちの後に、良くんと沙耶ちゃんからの花束贈呈の段取りだった。
 というのも、そうすることで、俺が沙耶ちゃんの父親として受け取ることができるからだった。
 まず、優子の両親の前に俺と優子が並び、俺は優子のお母さんに花束を渡し、優子は父親に花束を渡した。
 お父さんの瞳は、照明を受けてキラキラと輝いていた。今にも零れそうな涙を必死で堪えているようだ。
 男の見栄というやつだろうか。お母さんはすでにボロボロ状態だった。

 今度は良くんの両親の前に良くんと沙耶ちゃんが立ち、まず沙耶ちゃんが良くんのお父さんに、そして良くんがお母さんに花束を手渡した。
 次に俺と優子が立ち並ぶ前に、良くんと沙耶ちゃんが立ち、まず沙耶ちゃんが俺に、そして良くんが優子に花束を手渡した。
 その後俺たちは一列に並び、今日の参列者の皆さんの方へ向いて一斉に頭を下げた。

「どうか、本日式を挙げた二組の夫婦を、皆様これからも暖かく見守ってあげて下さい」
 司会進行係りの人が、俺たちのお辞儀に合わせてそう言うと、会場内は大きな拍手で包まれ、すべての式次第は終了した。
 俺たちは披露宴会場出口のドアの外で、今日来てくれた人々の一人ひとりに「ありがとうございました」と声を掛けながら見送った。

 一年を掛けて準備した、結婚式という一大イベントがようやく終わった。
 しかし、結婚式は終点ではなく、始点なのだ。これからの長い人生を一緒に過ごすことの……。
 何があっても離れず、助け合い慈しみ合い、いつか魂の浄化するその日まで一緒にいるということの始まりの日なのだ。
 そんな想いを胸に来客を見送る俺だった。