アガペー 〜あるAV女優へ〜 (後編)
六 大きな純白の翼
何も知らずに何気なく、いつものようにいつもの場所で。
当時大学生だった私は勉強をするのによく図書館を利用していました。
品川図書館ご存知ですか?
京急新馬場駅の近くにある四階建ての建物です。
季節は冬。確か年が明ける前でしたね。
ある平日の午前中、私はいつものように図書館の二階奥にある大テーブルに向かいました。
まだ早い時間帯だったので比較的空いていて、十人座れる大きなテーブルに確か三人程しか座ってなかったと思います。
私はすでに座っていた女性を見つけたので、その隣の席に座りました。
その女性が彩赤さんだったんですね。
彩赤さんは大きな黒のサングラスをしていて、点字の本を指で辿って読んでいました。
私は点字の本も、盲目の方を見るのも初めてでしたので、思わず見とれてしまいました。
スラッと伸びた美しい指を使って、ものすごいスピードで読んでいくんです。
指先から文字を吸い上げてるみたいに、その流れが透けて見えるようで、彼女の頭の中に情報がどんどん蓄積されていくイメージが湧いてきて、いつの間にか目が離せなくなったんです。
少しの間、呆気に取られてしまったんですね。
私は彼女にすごく興味を持ちました。
色白の綺麗な肌で大きなサングラスをして。
スタイルは少し細めで、その時は真っ赤なセーターを着ていました。
彩赤さんはいつもコーディネートに赤を取り入れるんですよね。
小さい頃赤い服を着ていると、かわいいねって周りの人によく褒められたんだそうです。
それで必ず赤い何かを常に身につけるようになったんですって。
そしていつも会うたびに聞いてくるんです。
「この服は赤い?」って。
で、私も「はい、ちゃんと赤いですよ」って答えるんです。
そしたら彼女は安心したような微笑みを返してくる。
私もすごく幸せな気分になるんです。
何も知らずに何気なく、いつものようにいつもの場所で。
当時大学生だった私は勉強をするのによく図書館を利用していました。
品川図書館ご存知ですか?
京急新馬場駅の近くにある四階建ての建物です。
季節は冬。確か年が明ける前でしたね。
ある平日の午前中、私はいつものように図書館の二階奥にある大テーブルに向かいました。
まだ早い時間帯だったので比較的空いていて、十人座れる大きなテーブルに確か三人程しか座ってなかったと思います。
私はすでに座っていた女性を見つけたので、その隣の席に座りました。
その女性が彩赤さんだったんですね。
彩赤さんは大きな黒のサングラスをしていて、点字の本を指で辿って読んでいました。
私は点字の本も、盲目の方を見るのも初めてでしたので、思わず見とれてしまいました。
スラッと伸びた美しい指を使って、ものすごいスピードで読んでいくんです。
指先から文字を吸い上げてるみたいに、その流れが透けて見えるようで、彼女の頭の中に情報がどんどん蓄積されていくイメージが湧いてきて、いつの間にか目が離せなくなったんです。
少しの間、呆気に取られてしまったんですね。
私は彼女にすごく興味を持ちました。
色白の綺麗な肌で大きなサングラスをして。
スタイルは少し細めで、その時は真っ赤なセーターを着ていました。
彩赤さんはいつもコーディネートに赤を取り入れるんですよね。
小さい頃赤い服を着ていると、かわいいねって周りの人によく褒められたんだそうです。
それで必ず赤い何かを常に身につけるようになったんですって。
そしていつも会うたびに聞いてくるんです。
「この服は赤い?」って。
で、私も「はい、ちゃんと赤いですよ」って答えるんです。
そしたら彼女は安心したような微笑みを返してくる。
私もすごく幸せな気分になるんです。
作品名:アガペー 〜あるAV女優へ〜 (後編) 作家名:krd.k