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D.o.A. ep.17~33

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「…もう十年以上前になるかな。俺、家族亡くして、ソードに育てられた。最初はずいぶん手を焼かせて…って、そんなことはどうでもいいか。
ただ家族を亡くしただけの、しかも手のかかる子供の俺を、なんでわざわざ引き取って育てようって決めたのか…疑問に思ってたところは、ある」
一般論からすれば、家族を殺された少年をひきとって、優しく介抱し育てあげたのはまぎれもなく美談だ。
あの男の気性を鑑みれば、その行動はさほどの不自然さを匂わせるものでもなかろう。
ただ、いつだって、親を亡くし孤児になったものは、掃いて捨てるほどいる。それらを、ソードがひきとろうとした様子はない。
だが、そのライル少年に、「アライヴ」という因子をつけくわえると―――
ソードがライルの中に潜む「アライヴ」の存在を知っていたと仮定すると、「武成王」が「ただの少年」を手もとにおいた意味が、がらりと違ったものになるのではないか。

「別にソードを変に疑ってるわけじゃないけど、もしそうなら、「アライヴ」について俺たちの知らないことを知ってるんじゃないかと…」
と言うところが、彼の底抜けのようなお人好しぶりを感じさせるのだが、一理ある。
ようやくキノコのスパゲティが運ばれてきていたことに気付いたライルは、フォークにぐるぐると巻きつけている。そこそこ固まったのでぱくりと口に入れた。
こんな重い話をしておきながら食欲をなくさないとは、なかなか肝が据わっている。

「ごくん。それにしても、意外だな」
「なにが」
「俺のことなのに、こんな親身になって考えてくれるなんて、さ」

ティルはその言葉に、はっとする。そして気まずそうに眉間の皺を深めた。必要以上に立ち入りすぎてしまった。
「なんだよ、そこまでいやそうな顔すんなよ」
むくれながらも絶えず口に運んでいる。ほどなく皿はきれいになった。
「ま、考えたってどうしようもないことより、建設的なことについて話そう」
「建設的?」
「バスタードって奴のことさ」
ライルとティルが果たして、今後について建設的な議論を重ねるにあたり、お互いが適当な相手かどうかはともかく。
これ以上「アライヴ」について推論しても、大した意味がないというのは、ティルも同意見だった。
どこの誰なのかはさておき、“デッド”とかいう何者かに従って洞窟の最奥にいたことはおそらく確かだろう。

「トリキアスは、そいつをやっつけるために来たわけだ」
間違った方を殺してしまっては大変だ、と名前を聞いて、問題ないと戦い始めたのである。
ただバスタードは、「殺し合い」に集中していたとは言い難い。戦いを長く楽しみたいトリキアスとは異なる意味でだ。
トリキアスによれば、バスタードは、ライルの様子を頻りに気にしていたらしい。今から思えばそれは、「アライヴ」の出現を待っていたとも解釈できるのだが。

「依頼人は誰って、言ってなかった?」
裏社会の人間は、依頼の確実なる遂行と、口の堅さで信を得る。言うはずがない。
わざわざ名前を確認しているあたり、「洞窟の奥にいる者を殺せ」などというアバウトなものではなかったようだった。
ならば依頼人のてがかりは、魔物あふれる洞窟の奥に誰かがいると知っていて、なおかつその人物が何者かまで知っている人間ということになるのである。

「バスタードってそんなに有名なヤツなのかなあ…」
ライルはうーん、とうなって腕を組む。建設的といいつつ、このままでは大して実になりそうもない。
「…依頼人に、一つ可能性はある」
「え?だれ?」
「武成王だ」
「…またソードか。なんで」
「真っ先に24班の帰還を出迎えたのが武成王だ…まるで、少しでも早く結果を聞きたいようだった」
「でもそれ、それだけヴァリメタルが重要だってだけかもしれないだろう」
「ならなぜそんな重要な仕事を、たかが下っ端に要求する?下っ端ってものは専門家でもなんでもないくせに好奇心旺盛だ。ただ異常を見つけたからといってすんなりと帰るわけがない。
ましてや、得体の知れない男がその先へ行こうとしていたらな」

して、バスタードが心術を使い、ライルから「アライヴ」を目覚めさせたとしよう。
ソードがライルの中に「アライヴ」が潜むことを知っていたという可能性と照らし合わせると、24班はこのために洞窟に行かされたのではないか。
そして、トリキアスはライルが無事洞窟の内部へ進入できるよう、雇われたのである。
「…という結論も導き出しうる、という話だ」
いかにも不満げなライルを見て、ティルはそうつけ加える。
ライルとしてはソードが、こんなまわりくどくて意味不明なことを企んだのが可能性としても受け入れ難く、また甚だ不快だった。
わかりやすくたとえると、親の悪口を聞かされているような心境であった。
しかし、ちゃんと議論を重ねようとするならば、固定観念があっては駄目だ。あらゆる可能性を疑ってかかる気概がなくてはならない。

「悔しいけど…お前の話はいいセンいってる、と思わなくもない」
反論したいけどできないからこのことはひとまずおいとこう、とライルはいい、傍を通ったウェイトレスを呼び止めた。
「茶くらい、飲むだろ」




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作品名:D.o.A. ep.17~33 作家名:har