小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

D.o.A. ep.17~33

INDEX|32ページ/66ページ|

次のページ前のページ
 




各軍の方針としては、揚陸したオーク軍団に片をつけ次第、第2軍に合流する。
人数で圧倒する総力で以って、軍港より出てきた敵軍を包囲しつつ撃滅し、そのまま軍港を奪還するという予定だ。
あくまで予定ではあるが、よほどのアクシデントが起こらぬかぎり、なんとか撃退できるであろう、とおもわれた。
とにもかくにも、第3軍は戦闘準備を開始しつつあった。
後から聞くに、第4軍の方でも敵襲があったらしい。第4軍は、他よりも兵力が豊富に配分されていた。
もうひとつの軍港を含めた地域を任されていて、さほど大きくないとはいえ、船を落ち着けられ、修理ができる要所だからである。
いざ合流した後、隙を見て横腹をつかれるといたいので、各軍はしっかりと駆逐しておかなくてはならない。
偵察報告によると山村ブランから主力オーク軍団を発見したようだ。
例の正体不明の旗を掲げた軍団の数は、やたら多かったが、装備は実に中世的だった。
あれだけの猛威を誇った砲弾を船に積んでいたわりに、オークどもの武器は斧、剣、弓矢、槍など、こちらの兵と何の遜色もない。
どころか、いくらか粗悪であった。
けれどなおオークは強かった。一体で、何人もの兵を力任せになぎ払った。大軍港司令部をひるませたのも納得の戦闘能力であった。
第3軍主力の駐屯する町ローレンへと向かっているようであり、その途中にあった村へ、ちょっとした数をおいていったようだ。
けれども各軍は、かの砲弾のような未知の武器を所持している可能性をおそれたから、油断せず腰をすえていたのである。
この分なら計算上その3倍に色をつけたくらいの兵数を置き、第2軍に合流してしまってもよいのではないかと、第3軍司令官リッツ大将はおもった。
多くの武官も、それに賛同を表したが、たった一人だけ強固に反対を唱える男がいた。

「司令官どの、ここは油断せず全力で迎え撃ち、しかと全滅させてから第2軍へ合流すべきだ!」
フェルデ中佐は机上に両手をつよくたたきつける。
「ですがフェルデ中佐、ご存知のとおり大軍港には刻一刻と敵が集っている。合流は早ければ早いほどいいでしょう」
「オークを甘く見すぎている!第一、主力を発見したというが、それが全てかどうかなどわかったものではないッ!
そんな措置をとって万一この方面が全滅したら、どう責任とるつもりなのだ」
フェルデは軍人であると同時に魔物についての研究者であり、その知見にはなかなかの定評があった。
海岸近くにあった兵隊などちょっかいを出された程度にすぎず、それから計算して敵の実力を定めることは大きな誤りである。
むしろ、ちょっかいを出された程度で死者が出たこの状況をおそれねばならない。
本格的に大集団で攻勢に出たオークは、3倍などという机上の計算とは比べものにならぬ力でもって、ロノア軍に襲いかかるであろう。
と、フェルデは頑固に主張をかさねたのだが、それは残す人数を多めにするという、微妙な妥協でもってしか叶えられなかった。
第3軍の司令部はあせっていたのである。
彼の主張を聞き入れ、きっちり全滅などという悠長な目標をはたすまで全軍でとどまるとしよう。
もしも大軍港への敵の集結が早い場合、合流するまでの間、第2軍は単独で大軍とあたらねばならないのだ。
こうなってしまえば、そう長くもたずに壊滅することになるだろう。
それが防壁のない王都へ攻め込むのも時間の問題で、そうなってしまえばとりかえしはつかない。
そんな多人数の意見が採用され、会議の結果、第3軍は半数以上が第2軍へ合流することに決まってしまったのである。
司令官として、副司令官であったヒュー中将が第3軍にのこった。
フェルデは決まってから、合流の準備が整うまで何度も食い下がったものの、最後は嫌な顔をされ撥ねつけられてしまった。
(オークのおそろしさを、ちいとも理解しておらん)
オークは、トータスに生息していない魔物であるので、多くの軍人はその脅威をじかに感じることも、知る機会も持たない。
しかしフェルデは、研究のためにオークの生息している地――しかも魔物がとびきり強暴として知られる、フェルタールへとおもむいている。
その自分の意見を聞かぬとは何事であろう。
駐屯地を足音荒く歩きまわるフェルデは、怒りで顔がゆがんだ。
沸々と煮えたぎる憤怒のあまり、第2軍への合流も見送らず、与えられている部屋の窓から、山のむこうを睨みすえていた。
のこされた半分以下となった兵数は、そのオーク集団よりはるかに多く、3倍をゆうに超えるであろう。
海岸からこの町までたどり着くに、休みなしで歩いて4日はかかる。現実ならば6日はかかると考えればよい。
それをフェルデは、瞬きのようにも感じていたし、永遠のようにも感じられていた。





第3軍の半数以上が大軍港方面へ発って何日かが経過した。
オークは意外に侵攻に難渋しており、現在全道程の半分をすぎたところだった。
そこは計算外の幸運だった。
第3軍の担当する地域は見通しが悪くいりくんだ場所が多い。
トラップを仕掛けるのにもってこいであり、工作兵が頑張って随所に置いたそれがしっかり功を奏しているようであった。
おかげで海岸付近にいた兵隊は撤収し、第3軍主力のもとに集うことができたのである。
オークとの戦いを多少経験した兵たちは、大きな力となることが期待された。


*******

作品名:D.o.A. ep.17~33 作家名:har