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D.o.A. ep.17~33

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Ep.22 敵来る





王国祭が無事終了した、次の日の夜のことだった。
総司令部となったロノア王国軍本部の階段を、わき目もふらず駆け上がっていく一士官の姿があった。
顔色は、息があがるほどの運動量にもかかわらず蒼白である。
彼は、三階の目的地である部屋の前までくると、ノックすらせずにいきおいよく室内へととびこんだ。
「ぶせい、おう、かっかッ!」
息もたえだえに呼んだその人は、部屋のどこにもいない。
武成王がいるべき場所に座っていたのは、ひどくいかめしい顔をしたひげ面の、スキンヘッドの男だった。
もちろんこの士官はその男のことも知っている。
武成王の補佐と代理ををにない、恐ろしいことで知れわたっている、ロノア王国軍のナンバー2。
「は、ハスカード準武成王閣下!」
「ノックぐらいせんか。武成王ならばおらんぞ。用件はわしが聞く」
条件反射のようなもので、思わずびしっと敬礼をした一兵士は、それを聞いて一瞬呆気にとられる。
このような事態に、総司令官たるものが不在とはどういう了見であろう。
詰問したい気にかられたが、そのようなことをできる立場ではないし、しているひまもない。
「緊急の報告であります!」
「うむ」
ハスカードはうなずき、先をうながす。

「――今夕刻、偵察船がロノア海の北北西にてッ、大規模の船隊を視認、いたしましたッ!」
「…ッ、間違いないか」
「ハッ、間違いございません!詳細な報告は、この中に」
いって士官はふところより、きっちり封印された報告書をとり出すと、テーブルのむこうにいるハスカードに手渡す。
彼は受け取って、
「ご苦労だった。退出せい」
と命じたのだが、士官は蒼白な面持ちのまま、なにを考えているのかうごかない。不審におもい、もう一度くりかえす。
「聞こえなんだか」
「も、もうしわけありませんっ!失礼いたしました!」
ぴゃっと跳びあがるように反応した士官は、敬礼もわすれて逃げ出すように退室していった。
顔がこわいとよくいわれるが、ハスカードはつい今朝のことを思い出していた。

―――苦労かけるな。アハスさん。
―――お前にとって宿願の戦いであろう。承知している。任せて、行け。なに、この程度を苦労などというては、わしの息子はどうなる。
―――そんなこわい顔して。ホントは大事でしょうがないことくらい、知ってますよ。
―――ふん。自分を天才と、なんの疑いもなく信じこめるのは、ある意味尊敬に値するかもしれんがな。食っていけにゃ何にもならん。
―――俺は好きだけどなあ、ノイン君の絵。

痛いくらいに決意をかためた男の顔だった。
ソード=ウェリアンスが、ロノア王国はじまって以来の最強の戦士であることは、先輩としてだれより知っているつもりだ。
その男が、ここまで。
アハス=ハスカードは、その決意を受け容れた。
武成王ソードを前線へゆかせ、代わって自分が大本営を担う、武成王としてのはたらきをすることを。
ソードは楽天家であった。いつも、だれより未来を見据えていた。
けれどその彼が、宣戦布告を受けてより、一度も戦いを終えた後を語らないことに気づいていた。
死を覚悟しているのか。
それほどの―――敵なのか。
彼がそれほどにおそれる敵の情報が、一端でもこの中にあるとおもうと、ハスカードはしらず動悸が早まった。


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作品名:D.o.A. ep.17~33 作家名:har