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D.o.A. ep.17~33

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Ep.17 それぞれの休日





「ぅ…あー!」
デスクにかじりつくのもそろそろ苦痛になってきて、たまりかねたように伸び上がり、首をまわす。

今日は24班の非番の日であるのだが、ライルは一人だけで机に向かって報告書を作成しなければならなかった。
報告書の提出は昨日であったが、特例として期限を今日の昼まで延期してもらっている。
なぜ特例かというと、非常に重要なことだからであるらしい。洞窟は崩れてしまい、もはや中が調べられないというのだ。
洞窟の内部など知るよしもないリノンとロロナにまともな報告書など作れるはずもなく、必然的にティルとライルにその負担はのしかかった。
申し訳なさそうなふたりの表情が浮かび、気を取り直して再び書類と対峙する。
「っていってもな」
万年筆の先の反対でこめかみを軽く打ちながら、目を閉じて記憶を呼び起こす。
かれこれ2時間、いまだ3行程度しか埋まっていないのは、決してサボっているわけではなく、覚えていることがあまりにも少ないからだ。

ライルが目覚めたのは、つい昨日の夕方ことである。任務後、3日眠っていたらしい。
目覚めたのは軍の宿舎であり、またもやリノン、それにヘクトやロロナに心配をかけてしまっていた。
特にヘクトは、「自分が祖父の復活パーティなどやっている間に…」と、はなはだしい自己嫌悪にとらわれており、何度も謝罪された。
ロロナは大変だったらしい。
あの内気な彼女が、見知らぬエルフの男たちに、ライルらを助けるため同行した。
さらに洞窟の周囲を陣取る魔物の群れにかこまれ戦い、見事生還した。
あの光景を知っているだけに、驚嘆すべき奮闘であることがわかる。
それだけでもう、昇進してもよいほどの大健闘であろう。
エルフの皆さんとっても強くてあたしなんか、と彼女らしい謙遜をしていたが、ヒト嫌いらしいエルフが彼女を守るとは思えないので、やはり彼女は独力で生き残ったのだ。

リノンはといえば、毒からすっかり回復したころ、はげしい地震に襲われたらしい。はて地震、記憶にない。
ともかくその地震がおさまり、しばらくして外へ出たところ―――で、どういうわけかライルとティルの二人に鉢合わせたのである。
ライルは無傷で、ティルに担がれていた。傷だらけのティルは唖然とした表情で、しばらくの間口も利けないほど困惑していた。
彼曰く、崩れる闇の洞窟をわずかな魔術の明かりを頼りに走っていたら、突如浮遊感に襲われ、気がつけばそこに立っていたという。
まったくもって不可解である。天からの助け、奇跡としか言いようのない出来事だった。
「ふたり…?」
ハッと脳内であざやかに赤い色が浮かんだ。それはヴァリメタルと、―――もう一人の同行者の色。
「あの殺し屋…!!」
そうさけぶと、今まで霧がかっていたような記憶が大きく晴れた。
あの、自称殺し屋の、トリキアス=ウンディーアと名乗った男はいったいどうしたのだろう。リノンは二人、といった。洞窟の入り口で、トリキアスとは別れたことは覚えている。
一人で先に行ってしまった彼を追うように、魔術の光に照らされた洞窟を進み、それから?―――わからない。
その3日後まで、記憶が完全に空白である。記憶は晴れたが、ライルの胸はもどかしさでいっぱいになった。
そして、その苛立ちを振り切るかのように万年筆をつかむと、一心不乱に報告書を書き上げたのだった。


作品名:D.o.A. ep.17~33 作家名:har