アイラブ桐生 序章 1~3
古くから市民に親しまれてきた通りです。
すぐ近くまで迫ってきている山裾と、その周辺には
散策にはうってつけの、景観が沢山点在をしています。
吾妻山(あずまやま)へ向かう本格的な登山道も整備されていますので、
休日や行楽の季節にはたくさんのハイカーたちがやってきて、
いつもと違う賑わいぶりを見せてくれます。
山の手通りの平日の昼は、静かそのものです。
朝と夕に学生服とセーラー服が頻繁に往来をしますが、
あとは、人通りの乏しい静かな路に変わります。
私の初恋のお相手、M子さんは、
この通りに面した女学校へ進学をしました。
山の手通りは、JRと私鉄の二つの駅から降りた大学生と、
高校生たちが、ともに通学のために歩きます。
M子とは、幼な馴染として普通に付き合いました。
M子もレイコも、同じ山の手のお嬢さんです。
お互いに幼い時からの遊び友だちで、おっとりしているM子とは正反対に
レイコはいつも元気にはしゃぎ回る女の子でした。
桐生天満宮の周辺に住む女の子たちは、
M子とレイコをはじめとして、7~8人でひとつの仲良しの
グループを作っていました。
のちに湯西川へ行って芸妓修業をはじめる清ちゃんも、
小学校3年生くらいからいつのまにか、
このグループに混じって遊んでいました。
また後になってから、桐生ではじめてのゼロ歳児保育園
「なでしこ」をたちあげる女子高卒業の四天王たちも、
やはりこのグループの中に居ました。
あまり男の子達を寄せ付けない、この(少し元気すぎるグループに)
なぜか私だけが、好意的に受け入れてもらえました。
そのきっかけは、ちょっとした武勇伝からです。
いつも天満宮の境内で遊んでいたこのグループへ、
別の小学校の悪がきたちがたまたまからんだ事が有りました。
稽古帰りに、其れを見つけ、
得意の柔道で、2、3人を投げつけて窮地を救った覚えがあります。
以来、ただのボディガードとして指名をうけることになりました・・・・
ただし、このことが後になって父親に知られ、
たいへんこっぴどく叱られました。
「おなごなんぞを助けるために、柔道を覚えさせているわけでは無い。
力や技を使う前に、もっと頭を使わんか、この馬鹿ったれ。
第一、素人を相手に柔道の技など掛けてなんとする。
修業が足らん、このうつけもの!」
うちのおやじは、常にこういう男です。
作品名:アイラブ桐生 序章 1~3 作家名:落合順平