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杉が怒った

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冷静に……そう、自分に言いきかせ深呼吸をした。あの紅い花粉の房は一つしか見ていない。まずは警告のために少しだけ毒物生成した、そして場合によっては、全部の花=花粉に送り込むつもりだろうか。バカげている。豊田は自分の想像を打ち消そうとしたが、完全には否定できなかった。それは、色々と勉強をしたせいだろう。植物は成長を阻害する昆虫や動物たちに対抗するために、自らの中に毒物を貯めこんでいるのだ。

手っ取り早いのは、この週刊誌の編集部に自分の体験談を投書することだろう。果たして、読んでくれるだろうか。電話をするという手もあると考えたが、口べたな自分のことを思うと、要領よく話せるかどうかわからない。結局豊田は週刊誌の編集部宛に《尾高山の記事に関係あるでしょうか》という題で手紙を書いた。


しばらく経って豊田は、尾高山トンネル工事現場とその周辺が、立入禁止になっていることをインターネットで知った。報告者は、警備の係員に理由を尋ねたが、工事中なのでということしか分りませんという返事だったと記していた。尾高山の正規の登山コースはそのままだったが、その他の細い道、特にトンネル工事現場に近い裏ルートは、ロープが張られた。そして警備の者が常駐するというものものしさに変わったようだ。そしてトンネル工事はまだ中断したままのようだった。



作品名:杉が怒った 作家名:伊達梁川