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杉が怒った

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博士の研究の源である【植物が危険を感じる能力】これを最初聞いたときは半信半疑だったが、たしか、ライターの火を点けて植物の葉に近づける……と、想像するだけで反応を示したという古い文献があったはずだ。当然のようにそれは証拠を揃えることが出来ないので、常識派に嘲笑されただろうと日野は思った。

少しずつ日野の頭に形つくられるその想像は、信じがたいものだった。今まで学習してきた常識を超えていた。S博士が【ジン】とコンピュータの接続を遮断しようと思った時点で、【ジン】は毒物を博士に向けて放射したのだろう。でも、どうやって……花粉の時期ではあるが、杉花粉は風まかせな筈だ。

博士が言った「自衛のための毒を攻撃に使うために生成」という言葉の意味を考えるととんでもないことになる。杉花粉の飛散力は広範囲だ。かつてあったサリン事件なんてものじゃない。まだ、信じたくないという気持ちもあったが、これを誰かに報告して、早急に対策を講じなくてはならない。願わくばサリンより低い毒性であって欲しいと思いながら身体を起こした。それから日野は、着替えを済ませると、こっそり病院を抜け出した。


作品名:杉が怒った 作家名:伊達梁川