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永山あゆむ
永山あゆむ
novelistID. 33809
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超短編小説 AKASHI~交錯し、交わる想い~

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 教室で、先生との最後のホームルームが終わる。
 ハヤトは席を立ち、アカネにそっけなく、
「……じゃあな」
 と言った。アカネも、
「うん……バイバイ……」
 と、彼に別れを告げた。
 親友である秋月智志と共に教室から出ていくハヤトを、アカネは淋しそうに見つめた。
「……っ!」
 アカネのらしくない姿を黙ってみることができなかったナギサは、ハヤトを追いかける。
「ハヤト君! ちょっと!」
 ナギサは、下駄箱の前にいるハヤトの手を掴む。
「お、おい! 急に引っ張るなよ!」
 ハヤトはナギサに、下駄箱前の廊下へと強引に連れ出される。
「一体、なんだよ……」
 何が何だか状況がのみこめないハヤト。
「なんだよ、じゃないわよ! このままで本当にいいの!? アカネは、ハヤト君のことが……」
「……!」
 アカネの気持ちを必死に代弁するナギサ。
そんな彼女の優しさが伝わらないハヤトではなかったが、気持ちを押し殺すように、
「いいんだよ……このままで……」
 と、静かに出て行った。ナギサはそんな彼を、ただ見つめることしかできなかった……。



 自転車でトモシと一緒に家に帰る道中、
「なあ、ハヤト。ほんとに良かったのか?」
 と訊ねられる。
「何のことだ」
 何事もなかったかのように答えるハヤト。
「大山さんの事だよ。何も言わなくていいのかよ。後悔しても知らんぞ」
「……」
「何もないなら、いいけどさ……絶対に行った方がいいって! 言うと言わないのとでは、後悔の大きさも違うはずだぜ。おまえにとっての大山さんは、そのくらいの存在だったのか?」
「それは……」
 ハヤトの脳裏に、アカネがJR藤生駅で淋しそうにしている情景が焼きつく。
 彼女とこんな別れ方をすることが納得できない自分に、ようやく気づいた。
「ああ~もうっ! 分かったよ!」
 髪をくしゃくしゃにしながら、ハヤトは覚悟を決めて、学校へと引き返していった。



 アカネは、ナギサと共に藤生駅のプラットホームにいた。中国電力火力発電所の鉄塔から、煙がもくもくと淋しそうに湧き上がる。
 電車がプラットホームへ静かに入ってくる。
(これで、いいんだよね……)
 自分にそう言い聞かせて、アカネは電車の中へ入ろうとする。しかし、そのとき!
「アカネーーーーッ!!」
 幻ではない! 学校へと続く駅裏の道路から自分を叫ぶ者が! そう、彼こそ!
「ハヤト!!」
 アカネは精一杯の大声を出して、彼の名を呼んだ。
 ハヤトは、急いで自転車を置いて駅裏の柵をよじ登り、アカネの下へと来る!



 ハヤトは勇気を出して、アカネに―。
 彼の想いにアカネも素直に―。



 そして、二人は抱き合い、実感した。
人生で忘れることのできない、闇と光が交わった想い―『証』が胸に刻まれたことを―。