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永山あゆむ
永山あゆむ
novelistID. 33809
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超短編小説 AKASHI~交錯し、交わる想い~

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AKASHI~交錯し、交わる想い~




「……い、行ってきまーす!」
 三月一日、朝。午前七時五〇分。
高校指定の学生服に素早く着替えた片平隼人は、母親にそう言って、すぐに自転車に乗り、山に沿ってできた団地の下り坂を風のように勢いよく駆け抜けていった。
「急がなきゃ!」
 どうやら遅刻ギリギリの時間帯のようだ。
「……ったく、あいつのせいでこんな目に……絶対、文句を言ってやる」
 ブツブツ文句を言いながら自転車をこいで、ハヤトは急いで学校へと向かった。
 錦帯橋が代名詞の山口県岩国市。鉄塔がそびえる中国電力火力発電所前のJR藤生駅の裏にある、校門までの急な上り坂が特徴的な、学生のさまざまな個性を引き出す高校―岩国総合高校。そこが彼の学び舎である。
 ハヤトは駐輪場に自転車を止めて、校門前の坂を急いで駆け上がっていった―。



 一方その頃、ハヤトのクラスである三年一組の教室では、
「アカネ、言わなくていいの?」
「ん? 何を?」
 きょとんとした表情で、質問をした親友―小早川渚を、アカネと呼ばれた少女―大山茜は見つめる。
「とぼけないで。ハヤト君のことに決まっているでしょ。今日が最後なのよ。このままでいいの?」
 アカネは自分の気持ちを押し殺すように、
「……分かってるわよ。だけど」
「だけどじゃない!素直にならないと、ハヤト君だって……」
「俺がどうかしたって?」
「ハ、ハヤト君!?」
 彼女たちのやり取りに、ハヤトが割って入る。どうやら間に合ったようだ。
「ハヤト、おっはよう!」
 ナギサとのやり取りで見せた表情とは違う明るい表情で、ハヤトに声をかけるアカネ。
「何がおっはようだ! お前のカラオケのせいでな、遅刻になりかけたんだぞ!」
「遅刻じゃなかったんだからいいじゃないのよ。そ・れ・に! カラオケに行こうって言いだしたのはハヤトでしょ! あたしが深夜まで歌うことになるのは当然、でしょ!?」
「う……。そ、それは……」
 彼女の反論に、ハヤトは返す言葉もなかった。カラオケが大好きだということを承知の上で提案したのだから。やっぱり言うんじゃなかった、と彼は心の中で後悔した。
 アカネは、そんな彼を見つめながら、
「そんなことよりハヤト、今日は卒業式よ。最後だから、バッチリ決めていかないと!」
「あ、ああ。……そうだな」
 そう。今日は三年生―ハヤト達にとっては門出の日なのだ。ハヤトは乱れた服装をきっちり整え、気を引き締めた。