嘘一つ定食
「お母さん、嘘一つ定食って、嘘が一つもなくって美味しかったよ・・・・・・ということは、嘘一つあると言ったことが嘘だということなの?」
高見沢はそんなややこしいことを呟きながら、千円札をお母さんに手渡した。
「お兄さん、いろいろと楽しみながら食事してもらって、ありがとね。
だけどね、嘘一つ定食の『嘘』は・・・・・・こ・れ・な・の」
お母さんは小声でそう囁いて、高見沢の手の平にぽとりと落としてくれたのだ。
それはなんと1枚のコイン ・・・ そう、百円玉。
「これで、わかったでしょ、お値段の千円が ・・・ 嘘なの」
お母さんの目が優しい。
まるで観音様のようにも見えてくる。
高見沢は胸の前で手を合わせ、合掌。
後は何も返せずコクリと頷いた。
そして、ぎゅっと握りしめたもの、
それは百円玉 ・・・ 1個!
だけど、思わずその顔は ・・・ ニコ!
となったのだ。
おわり