嘘一つ定食
『嘘一つ定食』
高見沢一郎は、それはそれなりのサラリーマン。
今日は朝からオフィスを飛び出した。
目的は新規顧客開拓。
とにかくビジネスチャンスがありそうな会社を、すべて回った。
「あ~あ、このままじゃ、なんともならないなあ」
成果が見えてこず、吐く言葉に力がない。
そして時計を確認してみれば、もう午後一時をまわってしまっている。
はっと気付けば、まだ昼食を取ってない。
「腹が減っては戦ができぬ、メシ食って、また元気出すか」
だが、そうあらためて意気込んでみても、気の利いたレストランが近場に見当たらない。
やっと駅前に、「ホント屋」という看板を掲げた小さな食堂を見付けた。
ちょっと奇妙な感じがしたが、とりあえず引き戸を引いて飛び込んだ。