聖なる夜に。
「おぅ。バイトだな」
正面のソファに座りながら石油ストーブに手をかざしているおじさんが、こっちを見て言った。
「はい。今日はよろしくお願いします」
お辞儀をする。
「こっちこそ、宜しく頼むよ。キーさん、衣装渡して」
僕から見て右側のソファに座っていたおじさんの一人がおもむろに立ち上がり、奥の戸棚から赤いコートを取り出すと、
「ほれ」
僕に投げてきた。
空中で広がりながら落ちてくるそれを、僕は難なく受け取る。
「それ、服の上から羽織るだけでいいよ。下は出る時に渡すから」
「あ、はい」
それだけ言うとおじさんは立ち上がり、
「じゃ、今から仮眠タイムね」
そう宣言して、奥の扉へと歩く。むこうは仮眠室なようだ。
「え? 今から行くんじゃないんですか?」
「何言ってるの。サンタさんは夜、子供たちが眠ったころに活動するんだよ」
「はぁ。それはそうですけども」
それだとお菓子を子供に配れないじゃないか。……大人が対象なのか? そもそも仮眠が必要なほどの夜更けに何をするのか。というかコート着用で寝るのか。
色々と疑問に思うことはあったが、最近まともに寝ていない僕は、すんなり眠ってしまった。