既望ホウ
さっき顔色の優れていなかった男は、深呼吸が効いたのか真っ先に船頭の呼びかけに応じ、上向きの巨大な砲台が置いてある甲板に向かった。
「せっかく鮮やかだった青に、鼠が混じっちまったな-------」
ある男はそんな事を言いながら、砲台の横に置かれた、六人がギリギリ収まる容量のカプセルに、連なった花火玉を取り付ける。別の三人がそれを砲台の中に運ぶ。
先程どうでも良い事で張り合っていたとは思えない息の合いようだった。
船頭の男が砲台を無線操作するスイッチの接続を確認したところで、六人はカプセルに乗り込んで蓋を閉めた。
「神は何をするおつもりでしょうか?何かに乗り込んだようですが。あ!彼方の、<ピーー>の皆様の上辺りの空に、探査機が見えます!まぁもはや新発見など皆無でしょうが!」
オフ会にあやかってネット上で中継中と思われる取材班が、右方の船の上で実況をしている。だがそのマイクで拡張された音も、巨大な爆音に掻き消された。
―――探査機に向けて、花火付きのカプセルが打ち出されたのだ。
中の人々がまた外に出る頃にはもう原型も留めていないだろうに、Pさん達は無駄にピストルを打ち続けていた。
弾は玉に当たり、外れた数個の花火玉は、弾による火花で一足先に発火し、落下する最中に爆発して、火炎を受けたPさん達の船は酷い有様になった。
それとほぼ同時に、カプセルが探査機に激突し、僅かに残る燃料の所以か轟々と焔をあげ、花火玉は一際激しく爆発した。
オフ会の船はやはり雑多で、「OH MY GOOOOD!!」と悲痛の声を上げる者達、徐に拍手を上げる者達、ツイートする者達、と様々であった。
Pさん達はと言うと、これ以上損害を受けたら堪らないと、上から落ちる残骸から逃げるように退散した。