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恋色季節

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す―…

規則正しい呼吸の音があたりに響く。

晴れわたった空からあたたかな光が二人を照らす。

「やっぱり寝るんじゃん…」

自分の横で普段は絶対に見せないであろう無防備であどけない彼女の表情を見れば…

やっぱりギャップみたいなモノを感じるわけで…。

「ん…」

突然声をあげてフェンスから中村の肩に寄り添う。

「……。」

どうしたらいいの…。

身動きがとれず固まる中村。

「…りお」

「?!」

彼女の一言に自分がどれだけ見入っていたか気づかされる。

瞬時に目をそらし、隣にあったファンタをすこし口に含む。

………。

聞こえてくるのは麗らかなうぐいすの鳴き声―…。

「なんだ…寝言ね…」

さっきまであせっていた自分が急に恥ずかしく思えてくる…。

「…なんで寝言で俺の名前…」

第一、二宮は俺の名前をファーストネームじゃ呼ばない。

ぽかぽか暖かい日差しがうふたりを包む。

ふと目をやった先には

彼女の無防備にあいた唇…。

「…なんで俺こんなのになっちゃったんだろ…」

アンタが寝ていることをいいことに

キスしたい

なんてね―…。

「これじゃアンタの言うとおりだよね」

軽く

優しく

触れる程度に

影を交える…。

リップ音が辺りに響く。

パシリとかって肩書きで

学校のときは四六時中俺のそばにおいている…。

束縛…。

ほかのヤツには触られたくない―…。

アンタを…

このまま壊れるほど抱きしめたい―…。

「こんなキモチ…なんていうんだろ…」

ぽつ―…。

「?」

サ―…

「うわ…雨…」

晴れ渡った空から

突然絹のような雨…。

「二宮…二宮おきて」

彼女の肩をぐらぐらゆすってみる。

「ん―…」

うっすら目を開けてこちらをみる。

「雨降ってきた。ぬれるよ?」

「ん…」

まだ半分寝ているのか…。

「紗希…。」

「ん…」

「早くしないと風邪ひくよ?」

まだそこまではぬれていないが、服は体に張り付いている。

色っぽい…。

「アンタ…誘ってんの?
下着、透けてるから」

「……っ?!」

やっと覚醒したようだ。

「ばかっ!!見ないでよ!!」

「見ないから早く降りるよ?」

重い腰をあげて、すたすたと歩きだす中村。

その後を追ってパタパタとついていく紗希。

あたたかい雨がくすぐったい。

口の中にファンタの味がする…。

気のせい?

「ねぇ…中村?」

「何…?」

「口の中…ファンタの味がする」

驚く…否心なしかあせったように振り向く中村。

ほんのりと顔が上気している。

……。

そうか!!!

「あたし、眠ってるときファンタ飲んじゃった?」

それを聞いた瞬間、中村はふきだした。

「?」

「アンタ…寝てたのにどうやってファンタ飲むの?」

初めてみる中村の純粋な笑顔…。

笑う中村は、どこか子供っぽくて、いつも構えているようなオーラなんて…これっぽっちも感じなかった。

作品名:恋色季節 作家名:紗智