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恋色季節

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皐月

バンッ!!!

「遅いよ」

「〜っ!!!」

はい、只今紗希ちゃん中村君にパシられています。

「何してんの?早くこっちきなよ」

「はい…」

フェンスに寄り添っている中村のもとに少し小走りめに近づく。

暖かな春風が疲れたからだを癒してくれる。

あちらこちらで綺麗なうぐいすの声が聞こえてきて…

「ねむい…」

最近、中村にパシられる毎日…。

精神的にも肉体的にも疲れがたまるのは当たり前で。

それを聞いた中村はファンタを飲みながら返答する。

「寝れば?」

中村特有の淡白な返し方。

慣れはしたが、やっぱりムカつく。

ちょっとからかってみよう…。

「ヤダ。隣のおチビさんに襲われる」

「誰もアンタみたいな色気のない人なんて襲わないって」

口角を吊り上げ横目で見てくる中村。

その目に何もかも見透かされているようで…。

いつも、私が中村をハメようとするものなら

逆に手のひらで踊らされている。

「ファンタの大量摂取でファンタになっちゃえ」

「アンタ質量の計算できる?」

・・・。

「むきゃーっ!!!」

私が試行錯誤している横でひとり楽しそうに笑う中村…。

「アンタってホント一緒にいて飽きない」

奇声を発しながら中村を陥れることを考えている紗希には…

中村の呟きは届かなかった。

作品名:恋色季節 作家名:紗智